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宅建試験・テーマ別過去問解説集 民法(権利関係)

  制限行為能力者が契約にタッチする場合

 昭和62年[問 2] 制限行為能力者が契約にタッチする場合

14才の子供Aが、自己所有の土地をBに譲渡する契約を締結した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

(1)Aの法定代理人がその土地の登記の移転に協力したときは、当該契約を追認したものとみなされる。
(2)Aの法定代理人がその代金債権を第三者Cに譲渡しても、当該契約を追認したものとはみなされない。
(3)Aが一年後にBに対し売買代金を請求しても、当該契約を追認したものとみなされない。
(4)Aの法定代理人がBに対し売買代金を請求したときは、当該契約を追認したものとみなされる。

 

昭和62年[問 2] 解説

本問は、未成年者(14才の子供A)が、法定代理人の同意を得ないで、契約したことが前提になっている。この場合、その契約を取り消せるのが原則だ。しかし、その後、法定代理人の同意があったのと同視できる法律が定める事情があった場合には、事後的にせよ、法定代理人の同意があったこととして扱う(この場合、『その契約を追認したものとみなす』と表現する。従って、その契約を取り消せなくなる)。これを法定追認という。本問は、この法定追認に当たるかどうかを問うものだ。
(1)正しい。法定代理人が『登記の移転に協力した』ときは、法定追認となる。登記の移転に協力するという行為は、事後的にせよ、未成年者がした契約に同意したからこそできるからだ。
(2)誤り。法定代理人が『代金債権を譲渡した』ときは、法定追認となる。代金債権を譲渡するという行為は、事後的にせよ、未成年者がした契約に同意したからこそできるからだ。従って、その契約を追認したものとみなされる。
(3)正しい。法定代理人が『代金を請求した』ときは、法定追認となる。代金を請求するという行為は、事後的にせよ、未成年者がした契約に同意したからこそできるからだ。しかし、未成年者の間(本肢では15才)は判断能力がないので、未成年者自身が法定追認に当たる行為をしても、法定追認にはならない。
(4)正しい。(3)参照。

 正解(2)


平成20年[問 1] 制限行為能力者が契約にタッチする場合

行為能力に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

(1)成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
(2)未成年者は、婚姻をしているときであっても、その法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、取り消すことができる。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではない。
(3)精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者につき、4親等内の親族から補助開始の審判の請求があった場合、家庭裁判所はその事実が認められるときは、本人の同意がないときであっても同審判をすることができる。
(4)被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。

 

平成20年[問 1] 解説

(1)正しい。成年被後見人が契約した場合、日用品の購入等以外は、意思表示(法律行為)を取り消せる。事理を弁識する能力(自分の財産を管理する判断能力)がある状態で行われたものであるかどうかを問わない。したがって、本肢の表現は正しい。
(2)誤り。未成年者が、その法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、取り消せる。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではない。ところで、年齢は20歳未満(19歳以下)でも、一度結婚した者は、成年に達したものとみなされる。結婚して一家をかまえた経験のある者は、心の発達が成年者と同じとみられるからだ。したがって、本肢では「法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、取り消すことができる」ということにはならない。
(3)誤り。本肢は被補助人に関する問題だ。被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分であり、家庭裁判所で補助開始の審判を受けた者だ。ところで、補助開始の審判をするには、「本人の申立てまたは同意」が必要だ。被補助人は制限行為能力者の中では一番能力があるので、本人の意思を尊重するためだ。したがって、4親等内の親族から補助開始の審判の請求があっただけでは、家庭裁判所は補助開始の審判をすることはできない。
(4)誤り。被保佐人による不動産の売買契約は、保佐人の同意(又はこれに代わる家庭裁判所の許可)を得なければならず、同意を得ないでした契約は取り消せる。ただし、「被保佐人本人が、自分を行為能力者であると信じさせるための詐術(さじゅつ)を,契約の相手方に行ったとき」は,保佐人の同意を得ないでした契約でも取り消せなくなる。

 正解(1)


平成25年[問 2] 制限行為能力者が契約にタッチする場合

未成年者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

(1)父母とまだ意思疎通することができない乳児は、不動産を所有することができない。
(2)営業を許可された未成年者が、その営業のための商品を仕入れる売買契約を有効に締結するには、父母双方がいる場合、父母のどちらか一方の同意が必要である。
(3)男は18歳に、女は16歳になれば婚姻することができるが、父母双方がいる場合には、必ず父母双方の同意が必要である。
(4)Aが死亡し、Aの妻Bと嫡出でない未成年の子CとDが相続人となった場合に、CとDの親権者である母EがCとDを代理してBとの間で遺産分割協議を行っても、有効な追認がない限り無効である。

 

平成25年[問 2] 解説

(1)誤り。父母と意思疎通できない乳児も人間だ。人間である以上、契約の当事者になれるし、所有者にもなれる(こういうのを「人は生まれてから死ぬまで『権利能力』が有ると言う。昔は権利能力がない人間もいたが[例:リンカーンが開放する前の奴隷]、今はどんな国でも、人は生まれてから死ぬまで権利能力が有る)。したがって乳児も、不動産を所有できる。
(2)誤り。未成年者が契約するには、原則として法定代理人の同意が必要だ。でも、営業を許可された場合のその営業に関する契約については、法定代理人の同意なんかなくてもできる。未成年者に不利と言えないからだ。したがって本肢では、父母双方がいても、そもそも父母の同意自体が不要になる。なお本肢のような未成年者を、宅建業法では、「営業に関し成年者と同一の行為能力を『有する』未成年者」と表現する。
(3)誤り。わが民法は、精神的・肉体的に婚姻に適した「最低年齢」を男18・女16と考えている。その点で本肢は正しい。ところで未成年者が婚姻する場合、その思慮不足を補うために、父母の同意が必要だ。この場合、父母双方がいても、一方の同意だけで足りる。父も母も、子の親権に対しては「同等の発言力があるとする男女同権思想」の現われだ。ちなみに、父母双方ともに死んでいる場合・不明の場合・意思表示できない場合には、誰の同意がなくても婚姻できる(未成年後見人は同意を与える権限がない)というのが、法務省の通達だ。未成年婚に対する同意は、父母の愛情に基礎があるということ。
(4)正しい。親権者(E)は子(C・D)の財産を管理できるのが原則だ。でも、その一人の子と他の子との利益が相反する行為(EがCとDを代理してBとの間で遺産分割協議すること)については、親権者の管理が及ばず、家庭裁判所が選任する特別代理人にさせなければならない。親権者のサジ加減次第でCとDのもらえる遺産が違ってくるおそれがあり、その限りで、親権者は無権代理人になるからだ。したがって本肢のような遺産分割協議は、本人であるCとDの有効な追認(成年者になってからの追認)がない限り無効だ。

 正解(4)

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