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宅建試験・テーマ別過去問解説集 民法(権利関係)

 契約が約束通り守られない場合

昭和51年[問 9] 契約が約束通り守られない場合

宅地の売買契約に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)第三者の宅地を売ることを内容とする売買契約は、常に無効である。
(2)売買の目的物である宅地の上に第三者の地上権が設定されているために契約を締結した目的を達成することができない場合、善意の買主は、売主に対して損害賠償の請求はできるが、契約の解除はできない。
(3)売買の目的である宅地の上に存した抵当権の行使によって買主がその所有権を失った場合には、その買主は、契約の解除をすることができる。
(4)売買の目的の一部が他人に属しているため売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、代金の減額請求をすることはできないが、契約を解除することはできる。

 

昭和51年[問 9] 解説

(1)誤り。第三者(他人)の物を売ることを内容とする売買契約も、有効だ。
(2)誤り。本肢は、他人の用益権(地上権)によって権利が制限を受けている場合だ。この場合、買主は、善意であり、契約を締結した目的を達成することができない場合は、契約を解除できる。
(3)正しい。本肢は、他人の担保権(抵当権)の実行によって権利が消滅した(買主がその所有権を失った)場合だ。この場合、買主は、善意・悪意を問わず、契約を解除できる。従って本肢のように、買主の善意・悪意を限定しないで、「その買主は、契約の解除をすることができる」と言っても、正しい。
(4)誤り。本肢は、権利の一部が他人に属することにより買主に移転できない場合だ。この場合、買主は、善意・悪意を問わず、代金の減額を請求できる。

 正解(3)


昭和57年[問 11] 契約が約束通り守られない場合

契約の解除について、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

(1)契約の相手方が数人いる場合には、解除の意思表示は、その全員に対してしなければならない。
(2)契約の解除がされたときは、当事者は相手方を原状回復させる義務を負うが、あわせて損害賠償を請求されることはない。
(3)当事者の一方がその債務の履行を遅滞したときは、相手方は直ちに契約を解除することができる。
(4)契約の解除の意思表示がなされても、相手方が承諾しないときは、解除の効果は直ちに生じない。

 

昭和57年[問 11] 解説

(1)正しい。契約の相手方が数人いる場合には、解除の意思表示は、全員に対してしなければならない。これを解除権不可分の原則という。
(2)誤り。契約の解除がされたときは、当事者は相手方を原状回復させる義務を負う。あわせて損害賠償を請求されることもある。つまり、原状回復義務と損害賠償義務は併存する。
(3)誤り。履行遅滞の場合は、相当の期間を定めて履行を催告し、それでも履行されないときでなければ、契約を解除できない。相手方が直ちに契約を解除できるのは、履行不能の場合だ。
(4)誤り。解除は一方的にするものである。従って、契約の解除の意思表示がなされたときは、相手方が承諾しないときでも、解除の効果が生じる。

 正解(1)


昭和60年[問 4] 契約が約束通り守られない場合

契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

(1)解除権は、法律の規定によって発生するものであり、契約当事者間の約定によって発生することはない。
(2)債務の履行が債務者の責めに帰すべき事由によって不能となったときは、債権者は、直ちに契約を解除することができる。
(3)解除後の原状回復において、返還すべき金銭があるときは、解除の時点からの利息を付さなければならない。
(4)解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対して相当の期間を定め、その期間内に解除するか否かを確答すべき旨を催告することができ、その期間内に解除の通知を受けないときは当該契約は解除されたものとみなされる。

 

昭和60年[問 4] 解説

(1)誤り。例えば、債務不履行を理由とする解除権は、確かに、法律の規定によって発生する。しかし、解除権は、契約当事者間の約定によって発生することもある。例えば、解約手付を授受した場合の解除権は、当事者の約定によって発生するものだ。
(2)正しい。「債務の履行が債務者の責めに帰すべき事由によって不能となったとき」とは、履行不能を指す。履行不能の場合は、履行不能が生じたら『直ちに』契約を解除できる。履行遅滞のように、解除する前に催告を経る必要はない。
(3)誤り。契約解除は、契約を『初めからしなかったことにする』行為だから、解除した後、お互いに原状回復する必要がある。そして、解除後の原状回復において、返還すべき金銭があるときは、『受領時から』の利息を付さなければならない。解除は、初めから(受領時から)契約をしなかったことにする行為だからだ。解除の時点からの利息を付けるのではない。
(4)誤り。解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対して相当の期間を定め、その期間内に解除するか否かを確答すべき旨を催告することができる。そして、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権を有する者の『解除権は消滅する』。

 正解(2)


昭和62年[問 4] 契約が約束通り守られない場合

土地及び建物について、Aを売主、Bを買主とする売買契約が成立した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

(1)その土地の所有者は他人Cであって、Aは、Cからその土地の所有権を取得してBに移転することができなかった。この場合、BはAに対し、常に損害賠償の請求をなし得る。
(2)その建物に隠れた瑕疵があることが判明した場合であっても、瑕疵担保責任を負わない旨の特約を予め締結しておけば、Aは常に責任を免れる。
(3)その土地の一部は他人Cの所有のものであって、AはCからその部分の所有権を取得してBに移転することができなかった。この場合、Bは、その部分の所有者がCであることを知らなかった場合に限り、代金の減額を請求することができる。
(4)その建物に抵当権が設定されており、抵当権の実行によりBがその所有権を失ったときは、Bは、損害賠償を請求することができる。この場合、請求権を行使することができる期間は、抵当権実行の時から1年以内に限られない。

 

昭和62年[問 4] 解説

(1)誤り。本肢は、権利の全部が他人(C)に属することにより買主に移転できない場合である。この場合、悪意の(その事実を知っていた)買主(B)は、損害賠償を請求できない。従って、「BはAに対し、常に損害賠償の請求をなしうる」と言ったら誤り。
(2)誤り。瑕疵担保責任を負わない旨の特約をしていた場合でも、『売主が知っていて買主に告げなかった事実(瑕疵)』については、売主は瑕疵担保責任を負う。
(3)誤り。本肢は、権利の一部が他人(C)に属することにより買主に移転できない場合である。この場合、買主は善意・悪意を問わず(その部分の所有者がCであることを知る・知らないにかかわらず)、代金減額を請求できる。
(4)正しい。本肢は、他人の担保権(抵当権)の実行により権利が消滅した場合である。この場合、買主は善意・悪意を問わず、損害賠償を請求できる。しかし、これを請求できる期間は、抵当権実行の時から1年以内に限られない。時効になるまで請求できる。

 正解(4)


平成2年[問 2] 契約が約束通り守られない場合

債務不履行による損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

(1)金銭債務の不履行については、債権者は、損害の証明をすることなく、損害賠償の請求をすることができる。
(2)損害賠償額の予定は、契約と同時にしなければならない。
(3)損害賠償額の予定は、金銭以外のものをもってすることができる。
(4)損害賠償額の予定をした場合、債権者は、実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても、予定額を超えて請求することはできない。

 

平成2年[問 2] 解説

(1)正しい。損害賠償を請求する債権者は、自分が損をしたことと、その額とを証明しなければならないのが原則である。しかし、金銭債務の不履行については、債権者は、損害の証明をすることが不要である。それは、金銭は万能だという考え方に基づく。万能である金銭の支払いを履行してもらえなかった債権者には常に一定額(年利5分…これを法定利息という)の損害が発生すると、民法は考えたのである。
(2)誤り。当事者は、あらかじめ将来の損害の発生に備えて損害賠償額の予定をすることができるが、その予定は、契約と同時にする必要はない。
(3)正しい。損害賠償額の予定は、金銭以外のものをもってすることができる。例えば、「将来損害が発生したら自動車の所有権を移転する」というような約束を予定してもよい。
(4)正しい。損害賠償額の予定をした場合、債権者は、実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても、予定額を超えて請求することはできない。例えば、損害賠償の予定額を 100万円としたところ、 200万円の損害が実際に生じ、それを証明したとしても、 100万円の損害賠償しか取れないということである。

 正解(2)


平成4年[問 8] 契約が約束通り守られない場合

居住用不動産の売買契約の解除または取消しに関する次の記述のうち、民法の規定 及び判例によれば、正しいものはどれか。

(1)当該不動産に隠れた瑕疵がある場合、居住の用に支障がなくても、買主は、当該契約を解除することができる。
(2)買主が支払期日に代金を支払わない場合、売主は、不動産の引渡しについて履行の提供をしなくても、催告をすれば、当該契約を解除することができる。
(3)買主のローン不成立のときは契約を解除することができる旨の定めが当該契約にある場合において、ローンが不成立となったときは、売主がその事実を知っていても、買主が解除の意思表示をしない限り、契約は解除されない。
(4)当該契約の締結は第三者の詐欺によるものであったとして、買主が契約を取消した場合、買主は、まず登記の抹消手続を終えなければ、代金返還を請求することができない。

 

平成4年[問 8] 解説

(1)誤り。瑕疵担保責任において、買主が契約を解除するには、その瑕疵によって『契約の目的を達成できない』ことが必要である。居住の用に支障がないのだから、契約の目的を達成できたと言え、契約を解除できない。
(2)誤り。買主が履行遅滞しているので、売主は、催告をした上で、契約を解除できるはずである。しかし、売主が自分の債務の提供(不動産の引渡しについての履行の提供)もしないで、催告だけで解除できるのでは当事者間の公平を失するで、売主が解除するには、催告の他に、自分の債務の提供が必要である。
(3)正しい。契約を解除するには『解除するという意思を表明する必要がある』。本肢では誰も解除の意思表示をしていないから、契約が解除されたことにはならない。なお「ローン不成立のときは契約を解除できる」という条件が成就しているから、契約は解除されなくても、契約は『効力を失う』ので注意。
(4)誤り。契約を取消した場合、その契約は無効になるから、買主は代金返還を請求できる権利を取得し、買主は居住用不動産の登記を抹消する(つまり不動産を返す)義務を負う。判例は、この権利と義務は『同時履行の関係』にあるという。しかし、本肢は「買主は、まず、登記の抹消手続を終えなければ、代金返還を請求することができない」として、同時履行の関係を否定するので誤り。

 正解(3)


平成5年[問 8] 契約が約束通り守られない場合

Aが 1,000uの土地について数量を指示してBに売却する契約をBと締結した場合の、売主Aの担保責任に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

(1)その土地を実測したところ 700uしかなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、代金の減額を請求することができる。
(2)その土地のうち 300uがCの所有地で、AがBに移転することができなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、代金の減額を請求することができる。
(3)その土地のすべてがDの所有地で、AがBに移転することができなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。
(4)その土地にEが登記済みの地上権を有していて、Bが利用目的を達成することができなかった場合、Bは、善意のときに限り、契約を解除することができる。

 

平成5年[問 8] 解説

(1)誤り。数量指示売買で数量不足の場合、買主が代金減額請求権を行使できるのは善意の場合に限られる。
(2)正しい。一部他人の物の売買の場合、買主は『善意悪意に関係なく』代金減額請求権を行使できる。
(3)正しい。全部他人の物の売買の場合、買主は『善意悪意に関係なく』契約解除権を行使できる。
(4)正しい。用益権(地上権)の制限がある場合、買主が契約解除権を行使できるのは善意の場合に限られる。

 正解(1)


平成8年[問 8] 契約が約束通り守られない場合

AがBから建物所有の目的で土地を買い受ける契約をしたが、AB間に担保責任に関する特約はなかった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

(1)この土地がCの所有であることをAが知って契約した場合でも、Bがこの土地をCから取得してAに移転できないときには、Aは、Bに対して契約を解除することができる。
(2)この土地の8割の部分はBの所有であるが、2割の部分がDの所有である場合で、BがD所有の部分を取得してAに移転できないことをAが知って契約したときでも、Aは、Bに対して契約を解除することができる。
(3)この土地が抵当権の目的とされており、その実行の結果Eが競落したとき、Aは、Bに対して契約を解除することができる。
(4)この土地の8割が都市計画道路の区域内にあることが容易に分からない状況にあったため、Aがそのことを知らなかった場合で、このため契約の目的を達することができないとき、Aは、Bに対して契約を解除することができる。

 

平成8年[問 8] 解説

(1)正しい。全部他人(C)の物の売買で買主に移転できない場合、買主は善意悪意に関係なく、契約を解除できる。従って、Aが悪意(この土地がCの所有であることをAが知って契約した場合)でも、Aは、Bに対して契約を解除できる。
(2)誤り。一部他人(D)の物の売買で買主に移転できない場合、買主は善意のときに限り、契約を解除できる。従って、Aが悪意(BがD所有の部分を取得してAに移転できないことをAが知って契約したとき)なら、Aは、Bに対して契約を解除できない。
(3)正しい。他人(E)の担保権(抵当権)の実行によって権利(買主の所有権)が消滅した場合、買主は善意悪意に関係なく、契約を解除できる。従って、本肢ではAの善意悪意は不明だが、Aは、Bに対して契約を解除できる。
(4)正しい。売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合、このため契約の目的を達することができないときは、買主は善意のときに限り、契約を解除できる。従って、Aが善意(Aがそのことを知らなかった)だから、Aは、Bに対して契約を解除できる。なお、売買の目的物の隠れた瑕疵の典型は物理的な瑕疵(例:ガケ崩れしやすい土地)だが、本肢の場合のような法律的な瑕疵(都市計画道路の区域内にあるため建物が建てられない)も含まれる。

 正解(2)


平成8年[問 9] 契約が約束通り守られない場合

Aが、B所有の建物を代金 8,000万円で買い受け、即日3,000万円を支払った場合で、残金は3ヵ月後所有権移転登記及び引渡しと引換えに支払う旨の約定があるときに関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

(1)Aは、履行期前でも、Bに残金を提供して建物の所有権移転登記及び引渡しを請求し、Bがこれに応じない場合、売買契約を解除することができる。
(2)Bが、履行期に建物の所有権移転登記はしたが、引渡しをしない場合、特別の合意がない限り、Aは、少なくとも残金の半額2,500万円を支払わなければならない。
(3)Bが、Aの代金支払いの受領を拒否してはいないが、履行期になっても建物の所有権移転登記及び引渡しをしない場合、Aは、Bに催告するだけで売買契約を解除することができる。
(4)Aが、履行期に残金を提供し、相当の期間を定めて建物の引渡しを請求したにもかかわらず、Bが建物の引渡しをしないので、AがCの建物を賃借せざるを得なかった場合、Aは、売買契約の解除のほかに、損害賠償をBに請求することができる。

 

平成8年[問 9] 解説

(1)誤り。買主が売買契約を解除するには、売主に債務不履行(本肢では履行遅滞)がなければならないが、Bの債務(所有権移転登記及び引渡し)の履行期は3ヵ月後なので、履行期前では、Bは債務不履行(履行遅滞)になっていない。従って、Aが履行期前にいくら残金を提供してもAは売買契約を解除できない。
(2)誤り。Aが残金を支払うのは、残金の支払い債務が履行期になった時であるが、その履行期は3ヵ月後なので、履行期前では、Bがいくら所有権移転登記をしても、特別の合意がない限り、Aは残金を(半額でさえ)支払う必要はない。
(3)誤り。Bが履行期になっても建物の所有権移転登記及び引渡しをしない場合はBの履行遅滞であるが、Aが売主の履行遅滞を理由に売買契約を解除するには、催告する(早く所有権移転登記及び引渡しをしてくれと言う)だけでは足りない。Aは、原則として、自分の債務(残金)の提供をした上で、上記の催告をする必要がある。自分の債務を提供することを『弁済の提供』というが、相手方の履行遅滞を理由に契約を解除するには、弁済の提供をした上で催告をする必要がある、ということだ。
(4)正しい。Aが履行期に残金を提供し、相当の期間を定めて建物の引渡しを請求したのに、Bが建物の引渡しをしない場合は、Bの履行遅滞であり、かつ、Aが履行遅滞を理由に売買契約を解除する要件もそろっている。そして、履行遅滞を理由に売買契約を解除した場合でも、損害があれば合わせて損害賠償も請求できる。本肢では、Bが建物の引渡しをしないのでAが第三者Cの建物を賃借せざるを得なかったというのであるから、Aは、損害賠償をBに請求できる。

 正解(4)


平成10年[問 8] 契約が約束通り守られない場合

Aが、Bに建物を 3,000万円で売却した場合の契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

(1)Aが定められた履行期に引渡しをしない場合、Bは、 3,000万円の提供をしないで、Aに対して履行の催告をしたうえ契約を解除できる。
(2)Bが建物の引度しを受けて入居したが、2ヵ月経過後契約が解除された場合、Bは、Aに建物の返還とともに、2ヵ月分の使用料相当額を支払う必要がある。
(3)Bが代金を支払った後Aが引渡しをしないうちに、Aの過失で建物が焼失した場合、Bは、Aに対し契約を解除して、代金の返還、その利息の支払い、引渡し不能による損害賠償の各請求をすることができる。
(4)特約でBに留保された解除権の行使に期間の定めのない場合、Aが、Bに対し相当の期間内に解除するかどうか確答すべき旨を催告し、その期間内に解除の通知を受けなかったとき、Bは、契約を解除できなくなる。

 

平成10年[問 8] 解説

(1)誤り。Aが履行期になっても建物の引渡しをしない場合は、Aの履行遅滞である。この場合、買主Bが売主の履行遅滞を理由に売買契約を解除するには、相当の期間を定めて催告し、その期間内にAの履行がないことが必要である。しかし、それだけでは足りない。Bは、原則として、自分の債務( 3,000万円)の提供をした上で、上記の催告をすることが必要である。自分の債務を提供することを『弁済の提供』というが、相手方の履行遅滞を理由に契約を解除するには、弁済の提供をした上で催告をする必要がある、ということだ。
(2)正しい。売買契約が解除された場合、売主及び買主はそれぞれ第三者の権利を害しない範囲で、相手方を『原状に回復させる義務』を負う。従って本肢の場合の買主Bは、Aに建物の返還をする他、2ヵ月分の使用料相当額を支払う必要がある。
(3)正しい。本肢の場合は、売主Aの履行不能になるので、買主Bは、Aの履行不能を理由に契約を解除できる。契約が解除された場合は相手方を原状に回復させる義務を負うので、Bは、代金の返還、その利息の支払いを請求できる。なお、契約が解除された場合、損害があれば合わせて損害賠償も請求できる。
(4)正しい。解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方(A)は、解除権を有する者(B)に対して相当の期間を定め、その期間内に解除するか否かを確答すべき旨を催告することができる。そして、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権を有する者の『解除権は消滅する』。

 正解(1)


平成11年[問 10] 契約が約束通り守られない場合

AからBが建物を買い受ける契約を締結した場合(売主の担保責任についての特約はない)に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

(1)この建物がCの所有で,CにはAB間の契約締結時からこれを他に売却する意思がなく,AがBにその所有権を移転することができない場合でも、AB間の契約は有効に成立する。
(2)Aが,この建物がAの所有に属しないことを知らず,それを取得してBに移転できない場合は,BがAの所有に属しないことを知っていたときでも,Aは,Bの受けた損害を賠償しなければ,AB間の契約を解除することができない。
(3)AがDに設定していた抵当権の実行を免れるため,BがDに対しAの抵当債務を弁済した場合で,BがAB間の契約締結時に抵当権の存在を知っていたとき,Bは,Aに対し,損害の賠償請求はできないが,弁済額の償還請求はすることができる。
(4)Bが,この建物の引渡し後,建物の柱の数本に,しろありによる被害があることを発見した場合は,AがAB間の契約締結時にこのことを知っていたときでないと,Bは,Aに損害賠償の請求をすることはできない。

 

平成11年[問 10] 解説

売主の担保責任の問題だが,これは,変なものを売った売主の責任だ。売主の担保責任について特別の約束(特約)がないときは,民法が決めたように取り扱われる。特別の約束があれば約束通りになるが,本問では,それを考えないで良いということだ。
(1)正しい。AがBに売ったのはCの建物だというのだから,変なものを売った場合の代表だ。こういうのを「他人の物の売買」というが,こんな変な売買でも,契約は有効になる。Cが売るつもりがあったかどうかに関係なく,他人の物の売買は有効だ。なぜなら,AとBに売り買いの意思がある以上,民法は当事者(AとB)の自由意思を尊重する法律なので,無効にする理由がないからだ。なお,Cに売るつもりがない(1)では,たとえ契約が有効でも買主Bはその建物を取得できない。
(2)誤り。「Aが,この建物が自分のものでないことを知らない」というのだから,(2)でも他人の物の売買が行われている。他人の物を売ったため買主に渡せない場合,売主が,それを知らなければ,売主は,契約を解除できる。他人の物を売ったことを知らない,というのは変な話だが,世の中に全然ないとも言い切れないので,民法はこういう制度を用意している。この場合,買主の方が他人の物であることを知っていたときは,買主を保護する必要はないので,売主は,損害賠償などしないで解除できる。
(3)誤り。これは,買主が売主の借金を立替払いした場合なので,売主にとっては情けない話だ。でも,買主には重大問題だ。立替払いしないと,Dに抵当権を実行されて,Bは,せっかく買った建物を失ってしまうからだ。そこで民法は,たとえ抵当権の存在を知っていた買主でも,売主に損害賠償を請求できるとしている。なお,Bは立替払いしたのだから,その分の弁償を請求できる点では,(3)は正しい。
(4)誤り。しろありが喰った建物を売ったというのだから,これも変なものを売った場合の代表だ。こういう場合に売主が負う責任を「瑕疵担保責任」という。瑕疵担保責任に限らず売主の担保責任は,売主に全然責任がなくても,売主が負う責任だ。だから,Aがしろあり被害を知らないでBに売ったとしても,Aは,瑕疵担保責任を負う(責任の内容はAの損害賠償の義務など)ので,Bは,損害賠償の請求ができる。

 正解(1)


平成15年[問 10] 契約が約束通り守られない場合

Aが,BからB所有の土地付中古建物を買い受けて引渡しを受けたが,建物の主要な構造部分に欠陥があった。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。なお,瑕疵(かし)担保責任(以下この問において「担保責任」という。)については,特約はない。

(1)Aが,この欠陥の存在を知って契約を締結した場合,AはBの担保責任を追及して契約を解除することはできないが,この場合の建物の欠陥は重大な瑕疵なのでBに対して担保責任に基づき損害賠償請求を行うことができる。
(2)Aが,この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合,Bの担保責任を追及して契約の解除を行うことができるのは,欠陥が存在するために契約を行った目的を達成することができない場合に限られる。
(3)Aが,この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合,契約締結から1年以内に担保責任の追及を行わなければ,AはBに対して担保責任を追及することができなくなる。
(4)AB間の売買契約が,宅地建物取引業者Cの媒介により契約締結に至ったものである場合,Bに対して担保責任が追及できるのであれば,AはCに対しても担保責任を追及することができる。

 

平成15年[問 10] 解説

瑕疵担保責任とは,売った物に隠れた瑕疵(欠陥)がある場合の売主の責任だ。瑕疵担保責任について特約(特別の約束)がないときは,民法が決めたように取り扱われる。特約があれば約束通りになるが,本問では,それを考えないで良いということだ。
(1)誤り。瑕疵担保責任の内容は,買主からする,契約解除と損害賠償の請求だ(売主はそれらを甘んじて受けなければならないという意味で,売主の責任となる)。ところで,買主(A)が「欠陥の存在を知って(悪意で)」契約を結んだときは,そもそも瑕疵担保責任の問題は生じない。これは,隠れた瑕疵(買主が気付かない欠陥)があるときの話だからだ。したがって,瑕疵がいくら重大でも,買主は契約解除も損害賠償も請求できない。
(2)正しい。瑕疵担保責任の内容は,買主からする,契約解除と損害賠償の請求だが,契約解除を請求するには「瑕疵が存在するために契約を行った目的を達成できない」ことが必要だ。
(3)誤り。買主は,瑕疵担保責任をいつまでも請求できるわけではない。買主が瑕疵を「知ってから(発見してから)1年以内」にしなければならない。(3)は「契約締結から1年以内」と書いてあるので,誤り。
(4)誤り。瑕疵担保責任は,あくまで売主(B)が負う責任なので,買主は,売主に対してだけ追及できる。したがって,売主に対して担保責任が追及できたとしても,売主でない媒介業者(C)に対しては追及できない。

 正解(2)


平成16年 [問 4] 契約が約束通り守られない場合

共に宅地建物取引業者であるAB間でA所有の土地について,今年9月1日に売買代金3,000万円(うち,手付金200万円は同年9月1日に,残代金は同年10月31日に支払う。)とする売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

(1)本件売買契約に利害関係を有しないCは,同年10月31日を経過すれば,Bの意思に反しても残代金をAに対して支払うことができる。
(2)同年10月31日までにAが契約の履行に着手した場合には,手付が解約手付の性格を有していても,Bが履行に着手したかどうかにかかわらず,Aは,売買契約を解除できなくなる。
(3)Bの債務不履行によりAが売買契約を解除する場合,手付金相当額を損害賠償の予定とする旨を売買契約で定めていた場合には,特約がない限り,Aの損害が200万円を超えていても,Aは手付金相当額以上に損害賠償請求はできない。
(4)Aが残代金の受領を拒絶することを明確にしている場合であっても,Bは同年10月31日には2,800万円をAに対して現実に提供しなければ,Bも履行遅滞の責任を負わなければならない。

 

平成16年 [問 4] 解説

(1)誤り。利害関係を有しない第三者(C)は,債務者(B)の意思に反して弁済できない。したがって,弁済期である10月31日を経過しても,Cが,Bの意思に反して残代金をAに支払える,ということはない。
(2)誤り。解約手付が授受された場合,売主(A)は,「買主(B)が契約の履行に着手するまでは」契約を解除できる。逆に言えば,売主は買主が契約の履行に着手した後は,解除できない。売主自身が履行に着手したどうかは関係ない。(2)は,「Bが履行に着手したかどうかにかかわらず,Aは,売買契約を解除できなくなる」と書いてあるので,誤り。
(3)正しい。損害賠償額(手付金相当額の200万円)の予定をした場合,裁判所は,後でその予定額を増減できないのが原則だ。また,債権者(A)は,実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても,予定額を超えて請求できない。したがって,Aは手付金相当額以上に損害賠償を請求できない。
(4)誤り。債務の履行(2,800万円の支払)は,通常,債務者が弁済の準備をして,債権者の協力を求めなければできない。これを債務者の「現実の提供」という。ただし,債権者が残代金の受領拒絶を明確にしている場合は,債権者の協力を得られないのだから,現実の提供は不可能だ。そこでこのような場合は,弁済の準備をしたことを債権者に通知して,受領してくれと催告すれば,債務不履行にならないことになっている。これを債務者の「口頭の提供」という。(4)は口頭の提供で足りるので,誤り。

 正解(3)

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