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宅建試験・テーマ別過去問解説集 民法(権利関係)

 契約が約束通り守られない場合

平成2年[問 2] 契約が約束通り守られない場合

債務不履行による損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

(1)金銭債務の不履行については、債権者は、損害の証明をすることなく、損害賠償の請求をすることができる。
(2)損害賠償額の予定は、契約と同時にしなければならない。
(3)損害賠償額の予定は、金銭以外のものをもってすることができる。
(4)損害賠償額の予定をした場合、債権者は、実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても、予定額を超えて請求することはできない。

 

平成2年[問 2] 解説

(1)正しい。損害賠償を請求する債権者は、自分が損をしたことと、その額とを証明しなければならないのが原則である。しかし、金銭債務の不履行については、債権者は、損害の証明をすることが不要である。それは、金銭は万能だという考え方に基づく。万能である金銭の支払いを履行してもらえなかった債権者には常に一定額(年利5分…これを法定利息という)の損害が発生すると、民法は考えたのである。
(2)誤り。当事者は、あらかじめ将来の損害の発生に備えて損害賠償額の予定をすることができるが、その予定は、契約と同時にする必要はない。
(3)正しい。損害賠償額の予定は、金銭以外のものをもってすることができる。例えば、「将来損害が発生したら自動車の所有権を移転する」というような約束を予定してもよい。
(4)正しい。損害賠償額の予定をした場合、債権者は、実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても、予定額を超えて請求することはできない。例えば、損害賠償の予定額を100万円としたところ、 200万円の損害が実際に生じ、それを証明したとしても、 100万円の損害賠償しか取れないということである。

 正解(2)


平成15年[問 10] 契約が約束通り守られない場合

Aが,BからB所有の土地付中古建物を買い受けて引渡しを受けたが,建物の主要な構造部分に欠陥があった。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。なお,瑕疵(かし)担保責任(以下この問において「担保責任」という。)については,特約はない。

(1)Aが,この欠陥の存在を知って契約を締結した場合,AはBの担保責任を追及して契約を解除することはできないが,この場合の建物の欠陥は重大な瑕疵なのでBに対して担保責任に基づき損害賠償請求を行うことができる。
(2)Aが,この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合,Bの担保責任を追及して契約の解除を行うことができるのは,欠陥が存在するために契約を行った目的を達成することができない場合に限られる。
(3)Aが,この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合,契約締結から1年以内に担保責任の追及を行わなければ,AはBに対して担保責任を追及することができなくなる。
(4)AB間の売買契約が,宅地建物取引業者Cの媒介により契約締結に至ったものである場合,Bに対して担保責任が追及できるのであれば,AはCに対しても担保責任を追及することができる。

 

平成15年[問 10] 解説

瑕疵担保責任とは,売った物に隠れた瑕疵(欠陥)がある場合の売主の責任だ。瑕疵担保責任について特約(特別の約束)がないときは,民法が決めたように取り扱われる。特約があれば約束通りになるが,本問では,それを考えないで良いということだ。
(1)誤り。瑕疵担保責任の内容は,買主からする,契約解除と損害賠償の請求だ(売主はそれらを甘んじて受けなければならないという意味で,売主の責任となる)。ところで,買主(A)が「欠陥の存在を知って(悪意で)」契約を結んだときは,そもそも瑕疵担保責任の問題は生じない。これは,隠れた瑕疵(買主が気付かない欠陥)があるときの話だからだ。したがって,瑕疵がいくら重大でも,買主は契約解除も損害賠償も請求できない。
(2)正しい。瑕疵担保責任の内容は,買主からする,契約解除と損害賠償の請求だが,契約解除を請求するには「瑕疵が存在するために契約を行った目的を達成できない」ことが必要だ。
(3)誤り。買主は,瑕疵担保責任をいつまでも請求できるわけではない。買主が瑕疵を「知ってから(発見してから)1年以内」にしなければならない。(3)は「契約締結から1年以内」と書いてあるので,誤り。
(4)誤り。瑕疵担保責任は,あくまで売主(B)が負う責任なので,買主は,売主に対してだけ追及できる。したがって,売主に対して担保責任が追及できたとしても,売主でない媒介業者(C)に対しては追及できない。

 正解(2)


平成20年[問 9] 契約が約束通り守られない場合

宅地建物取引業者であるAが、自らが所有している甲土地を宅地建物取引業者でないBに売却した場合のAの責任に関する次の記述のうち、民法及び宅地建物取引業法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。

(1)売買契約で、Aが一切の瑕疵(かし)担保責任を負わない旨を合意したとしても、Aは甲土地の引渡しの日から2年間は、瑕疵担保責任を負わなければならない。
(2)甲土地に設定されている抵当権が実行されてBが所有権を失った場合、Bが甲土地に抵当権が設定されていることを知っていたとしても、BはAB間の売買契約を解除することができる。
(3)Bが瑕疵担保責任を追及する場合には、瑕疵の存在を知った時から1年以内にAの瑕疵担保責任を追及する意思を裁判外で明確に告げていればよく、1年以内に訴訟を提起して瑕疵担保責任を追及するまでの必要はない。
(4)売買契約で、Aは甲土地の引渡しの日から2年間だけ瑕疵担保責任を負う旨を合意したとしても、Aが知っていたのにBに告げなかった瑕疵については、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権が時効で消滅するまで、Bは当該損害賠償を請求できる。

 

平成20年[問 9] 解説

(1)誤り。宅建業者が、自ら売主となって、宅建業者でない者と売買契約を結ぶ場合は、瑕疵担保責任について「民法の定めより買主に不利な特約」をしてはならず、やってしまえば、その特約は無効になる。Aは、一切の瑕疵担保責任を負わない旨を合意しているが、これは、民法の定めより買主に不利な特約だ。民法は、買主が欠陥を「発見した時から1年間」責任を負えと定めているからだ。だから、Aがした特約は無効になる。ということは,宅建業法上は特約しなかったことになるから、民法が適用される。民法では、買主が欠陥を「発見した時から1年間」責任を負えと定めているので、Aが、瑕疵担保責任を負う期間は、Bが欠陥を「発見した時から1年間」となる。甲土地の引渡しの日から2年間ではない。
(2)正しい。担保権(抵当権)の実行によって権利(買主の所有権)が消滅した場合、買主は善意悪意に関係なく、契約を解除できる。したがって、Bが甲土地に抵当権が設定されていることを知っていた(悪意だった)としても、BはAB間の売買契約を解除できる。
(3)正しい。瑕疵担保責任は、買主が瑕疵の存在を知った時(発見した時)から1年まで請求できるが、この請求は、訴訟を提起するまでの必要はない。瑕疵担保責任を追及する意思を裁判外で明確に告げればよい。
(4)正しい。宅建業者が、自ら売主となって、宅建業者でない者と売買契約を結ぶ場合は、瑕疵担保責任について「民法の定めより買主に不利な特約」をしてはならず、やってしまえば、その特約は無効になる。ただし、「目的物を引渡した時から2年以上瑕疵担保責任を負う」という特約だけは,民法の定めより買主に不利でも有効になる。だから本肢の特約は有効だ。もっとも、売主(A)が知っていたのに買主(B)に告げなかった瑕疵については、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権が時効で消滅するまで(目的物の引渡しより起算して10年まで)、買主は損害賠償を請求できる。

 正解(1)


平成24年[問 8] 契約が約束通り守られない場合

債務不履行に基づく損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

(1)AがBと契約を締結する前に、信義則上の説明義務に違反して契約締結の判断に重要な影響を与える情報をBに提供しなかった場合、Bが契約を締結したことにより被った損害につき、Aは、不法行為による賠償責任を負うことはあっても、債務不履行による賠償責任を負うことはない。
(2)AB間の利息付金銭消費貸借契約において、利率に関する定めがない場合、借主Bが債務不履行に陥ったことによりAがBに対して請求することができる遅延損害金は、年5分の利率により算出する。
(3)AB間でB所有の甲不動産の売買契約を締結した後、Bが甲不動産をCに二重譲渡してCが登記を具備した場合、AはBに対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。
(4)AB間の金銭消費貸借契約において、借主Bは当該契約に基づく金銭の返済をCからBに支払われる売掛代金で予定していたが、その入金がなかった(Bの責めに帰すべき事由はない。)ため、返済期限が経過してしまった場合、Bは債務不履行には陥らず、Aに対して遅延損害金の支払義務を負わない。

 

平成24年[問 8] 解説

(1)正しい。本肢のような場合、Aに故意・過失があれば、Aは不法行為による損害賠償責任を負う、というのが判例の立場だ。しかし判例は、Aに債務不履行による賠償責任を負わせることまでは認めていないので、誤りとなる。なぜなら、債務不履行と言うからには、「契約締結の判断に重要な影響を与える情報をBに提供すること」が債務の内容でなければならないが、そうではないからだ。例えば、不動産屋さんがお客さんに建物を売るときに、債務の内容は、瑕疵のないマンションの部屋を引渡し登記することだ。その前に行われる重要事項の説明は、宅建業法上の義務ではあるが、売主が負う債務の内容ではないのだ。なお判例は本肢に似た事例で、Aに特別の賠償責任(民法1条2項の「信義誠実の原則」を根拠とする賠償責任)を負わせることがある。それを「契約締結上の過失」責任という。でも本肢では関係ない。「契約締結上の過失」責任は、契約が不成立の場合に負わされる責任であり、本肢の場合は「Bが契約を締結している」からだ。
(2)正しい。本肢の借主Bは「金銭の給付を目的とする債務の不履行」を行ったことになる。その場合の損害賠償の額(遅延損害金)は、実際に生じた損害にかかわらず、法定利率によって定めるのが原則だ。そして民法上、法定利率は「年5分」と定められている。金銭には万能の作用がある(いつでも・どこでも流通する)ので、年5分を超える特別の約定(約束)をしない限り、実際に生じた損害にかかわらず、損害額を年5分に画一化させたのだ。したがって、利率に関する定めがない本肢の遅延損害金は、年5分の利率により算出する。ちなみに、本肢において「年5分」を超える年6分の約定利率があったとすると、遅延損害金は、実際に生じた損害にかかわらず、年6分の利率により算出することになる。
(3)正しい。Bは甲不動産をAとCに二重譲渡している。この場合、BA間の売買契約もBC間の売買契約も共に有効だ。でも、CがBより先に登記しているので、甲不動産の所有者はCに確定する。ということは、Bは、Aに対する売主の義務(引渡義務など)について、履行不能という形での債務不履行をしたことになる。履行不能があった場合、買主Bは、債務不履行に基づく「契約解除」と「損害賠償」を請求できる。
(4)誤り。本肢の借主Bは「金銭の給付を目的とする債務の不履行」を行ったことになる。普通の債務不履行(例:売主が期限までに買主に不動産を引渡さなかった)の場合は、債務者は不可抗力でした(自分には責めに帰すべき事由はないです)と抗弁すれば、債務不履行にならず、遅延損害金の支払義務も負わない。しかし金銭債務の債務不履行(金銭の給付を目的とする債務の不履行)は違う。債務者は不可抗力でしたと抗弁できない。自分には責めに帰すべき事由はないですと抗弁しても、債務不履行になり、遅延損害金の支払義務を負わされる。金銭には万能の作用がある(いつでも・どこでも流通する)ので、債務者の不可抗力の抗弁を許さない代わりに、損害額を年5分に画一化させたのだ。肢(2)参照。

 正解(4)

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