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宅建試験・テーマ別過去問解説集 民法(権利関係)

 手付

昭和63年[問 6] 手付

買主Aは、売主Bと土地の売買契約を締結し、手付を交付したが、手付について、AB間で別段の定めをしていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

(1)Bは、手付の倍額を償還すれば、何時でも契約を解除することができる。
(2)Aは、Bの債務不履行を理由に契約を解除したときは、損害賠償を請求することができるが、その額は手付の倍額である。
(3)Aは、Bが契約の履行に着手するまでは、手付を放棄して契約を解除することができる。
(4)Aは、自ら契約の履行に着手しているときは、手付を放棄して契約を解除することはできない。

 

昭和63年[問 6] 解説

(1)誤り。手付は民法上、解約手付と推定される。本問では、AB間で別段の定めをしていないので、解約手付と推定される。解約手付が授受された場合、売主(B)は、手付の倍額を償還すれば契約を解除できるが、それは、買主が契約の『履行に着手するまで』の間だ。手付の倍額を償還しても「何時でも」解除できるわけではない。買主が契約の履行に着手するまでの間に限定される。
(2)誤り。解約手付が授受されても、売主が債務不履行をした以上、買主(A)は、売主の債務不履行を理由に契約を解除できる。その場合に請求できる損害賠償の額は、『通常生ずべき』損害額だ。手付の倍額に限定されるわけではない。
(3)正しい。解約手付が授受された場合、買主(A)は、手付を放棄すれば契約を解除できるが、それは、売主が契約の『履行に着手するまで』の間だ。
(4)誤り。解約手付が授受された場合、買主(A)は、手付を放棄すれば契約を解除できるが、それは、売主が契約の『履行に着手するまで』の間だ。売主が契約の履行に着手するまでの間であれば、買主は、自分が履行に着手していても、解除できる。

 正解(3)


平成4年[問 7] 手付

不動産の売買契約における手付に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

(1)当該契約が宅地建物取引業者の媒介によるものであるときは、契約に別段の定めがあっても、手付は解約手付となる。
(2)解約手付の契約は、売買契約と同時に締結しなければ、効力を生じない。
(3)買主が手付を交付した後、契約に基づいて中間金の支払いを済ませた場合でも、契約に別段の定めがなく、売主が履行に着手していなければ、買主は、手付を放棄して、当該契約を解除することができる。
(4)買主が手付を交付した後、売主の責めに帰すべき事由により売主の債務が履行不能となった場合において、損害賠償額について契約に別段の定めがないときは、その額は手付の倍額とされる。

 

平成4年[問 7] 解説

(1)誤り。民法上の手付は、契約に別段の定めがあれば、その別段の定めの通りの性質を持つことになる。例えば、契約で証約手付と定めれば証約手付となり、解約手付とはならない。宅地建物取引業法の8種規制とは違う。
(2)誤り。解約手付の契約は、売買契約と同時に締結しなくても、効力を生じる。買戻しの特約と混同しないように。
(3)正しい。契約に別段の定めがなければ、民法上、手付は解約手付と推定される。解約手付が授受された場合、手付を交付した者(買主)は、相手方(売主)が履行に着手するまでは、手付を放棄して、当該契約を解除できる。自分が履行に着手している(中間金の支払いを済ませた)かどうかは関係ない。
(4)誤り。解約手付の授受があっても、相手方(売主)が債務不履行をしている場合は、債務不履行を理由とする損害賠償の請求ができる。この場合、損害賠償額について契約に別段の定めがないとき(損害賠償額の予定をしなかったとき)は、実際の損害額を証明すれば、その実際の損害額を請求できる。その額が手付の倍額に限定されるわけではない。

 正解(3)


平成12年[問 7] 手付

買主Aと売主Bとの間で建物の売買契約を締結し,AはBに手付を交付したが,その手付は解約手付である旨約定した。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。

(1)手付の額が売買代金の額に比べて僅(きん)少である場合には,本件約定は,効力を有しない。
(2)Aが,売買代金の一部を支払う等売買契約の履行に着手した場合は,Bが履行に着手していないときでも,Aは,本件約定に基づき手付を放棄して売買契約を解除することができない。
(3)Aが本件約定に基づき売買契約を解除した場合で,Aに債務不履行はなかったが,Bが手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき,Bは,その損害全部の賠償を請求することができる。
(4)Bが本件約定に基づき売買契約を解除する場合は,Bは,Aに対して,単に口頭で手付の額の倍額を償還することを告げて受領を催告するだけでは足りず,これを現実に提供しなければならない。

 

平成12年[問 7] 解説

解約手付とは,買主は手付を放棄して,売主は手付の倍額を返還して,相手が契約を果たす行為を始める(契約の履行に着手する)までなら,契約を解除できる性質の手付だ。
つまり,解約手付の受け渡しがあれば,
イ.買主は,売主が契約を果たす行為を始めるまで,渡した手付を放棄すれば,契約をやめることができる。
ロ.売主は,買主が契約を果たす行為を始めるまで,もらった手付の倍額を返還すれば,契約をやめることができる。
(1)誤り。民法は「他人の迷惑にならない限り,何でも約束した通りの事を認める」(契約自由の原則)という大目的を持った法律だ。したがって,買主と売主が約束した以上,手付の額が代金に比べて余りにも少なかったとしても,解約手付にしようという約束は,効力がある。
(2)誤り。解約手付の受け渡しがあれば,買主は,「売主が契約を果たす行為を始めるまで」,渡した手付を放棄すれば契約をやめることができる(上のイ.参照)。(2)では,買主は自分では契約を果たす行為を始めたが,売主はまだだ。したがって,買主Aは,手付を放棄して売買契約を解除できる。
(3)誤り。解約手付は,相手が契約を果たす行為を始めるまで,自由に契約を解除できる性質の手付だが,これは,「解除されても手付金に見合うお金をもらえば,その他は我慢しろ」という意味合いを含んでいる。だから,(3)のBが,手付の額を超える額の損害を受けたことを証明できたとしても,Bは,その損害全部の賠償を請求できるわけではなく,手付金に見合うお金(Aが放棄した手付金)で我慢するしかない。
(4)正しい。解約手付の受け渡しがあれば,売主は,買主が契約を果たす行為を始めるまで,もらった手付の倍額を返還すれば,契約をやめることができる(上記ロ.参照)。ここで「手付の倍額を返還する」とは,手付の額の倍額を実際に渡すこと(現実の提供)を意味する。単に口約束で手付の額の倍額を返還するから受領してくれと告げるだけでは,本当に返還してくれるかあてにならないからだ。

 正解(4)

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