宅建試験・マトメ集 法令上の制限
presented by 宅建倶楽部
第5章 宅地造成等規制法
宅地造成等規制法は,宅地造成に伴うガケ崩れや土砂の流出で「大勢の人」が死傷することを防ぐことを目的とする。
その目的を達成するために,宅地造成等規制法は,次の4つの手段を用意している。
第1 宅地造成工事の許可制
第2 一定の工事の届出制
第3 宅地を常時安全な状態に維持する義務
第4 造成宅地防災区域における規制
順番に説明して行く。
第1 宅地造成工事の許可制
宅地造成に伴うガケ崩れや土砂の流出で「大勢の人」が死傷することを防ぐため,宅地造成等規制法は,まず,宅地造成工事規制区域というものを定めている。
そして,宅地造成工事規制区域内で,宅地造成工事を行おうとする造成主は,原則として工事着手前に,知事の許可を受ける必要がある,としている。これが,宅地造成工事の許可制だ。
※
都市計画法による開発許可を受けて,その許可内容に適合した宅地造成工事については,宅地造成工事の許可が不要になる。
開発許可の基準は宅地造成工事の許可の基準を含むので,知事の二重手間を回避する趣旨だ。
宅地造成工事規制区域
(1)
宅地造成工事の許可制の対象になるのは,宅地造成工事規制区域内での宅地造成工事だ。
宅地造成工事を行おうとしても,そこが宅地造成工事規制区域でなければ,一切許可を受ける必要はない。
(2)
宅地造成工事規制区域とは,宅地造成に伴い災害(ガケ崩れや土砂の流出)が生ずるおそれが大きい市街地または市街地となろうとする土地の区域で,宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものだ。
このような区域であれば,都市計画法の都市計画区域の内外を問わず,宅地造成工事規制区域に指定される可能性がある。
なお,宅地造成に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地または市街地となろうとする区域であれば,どこでも宅地造成工事規制区域に指定できるわけではないので,注意が必要だ。
宅地造成工事規制区域の指定は,宅地造成に関する工事について規制を行う必要があり,かつ,災害の防止にとって必要最小限度のものでなければならない。
(3)
宅地造成工事規制区域を指定するのは,知事だ。
ただし,地方自治法に基づく指定都市・中核市・特例市などでは,指定都市・中核市・特例市の市長などが指定する。
なお,知事が宅地造成工事規制区域を指定する場合は,指定する前に,関係市町村長の意見を聞く必要がある。
また,知事は宅地造成工事規制区域を指定した後に,都道府県等の公報等でその旨を公告する必要がある。
宅地造成工事とは
(1)
宅地造成工事の許可制の対象になるのは,宅地造成工事規制区域内での宅地造成工事だ。
宅地造成工事規制区域で何か工事を行おうとしても,それが宅地造成工事に当たらなければ,一切許可を受ける必要はない。
(2)
宅地造成工事とは,次の@とAの両方の要件を満たす工事を指す(@とAのどちらかの要件を欠く工事は,宅地造成工事に当たらず,知事の許可は不要だ)。
@宅地以外の土地を宅地にするため,または,宅地において行う(宅地以外の土地にする目的がある場合を除く),土地の形質変更であること。
要するに,出来上がりの姿が宅地になる工事だ。
※
・非宅地から宅地へ……@の要件を満たす
・宅地から宅地へ………@の要件を満たす
・宅地から非宅地へ……@の要件を満たさない(宅地造成工事に当たらず)
・非宅地から非宅地へ…@の要件を満たさない(宅地造成工事に当たらず)
ところで,宅地造成等規制法上の宅地とは,農地,採草放牧地,森林,公共用施設用地(例:道路用地・公園用地・公営墓地用地)以外の土地をいう。
だから,農地,採草放牧地,森林,公共用施設用地は宅地に当たらず,出来上がりの姿が農地,採草放牧地,森林,公共用施設用地になる場合には,許可を受ける必要はない。
A次のa.またはb.のどちらかの規模を満たす工事であること。
a. 切土または盛土をする土地の面積が500uを超えるもの(500uを超えるとガケの高さに関係なくAの要件を満たす)
b.切土または盛土をする土地の面積が500u以下の場合は…
・切土をするときは,2mを超えるガケを生ずること
・盛土をするときは,1mを超えるガケを生ずること
・切土,盛土両方するときは,2mを超えるガケを生ずること
(3)
宅地造成工事規制区域内で宅地造成工事を行おうとする場合,その土地が宅地造成工事規制区域の指定が行われる以前からの宅地であるときでも,許可を受ける必要がある。
許可を受ける者,許可を受ける先,許可を受ける時期
(1)
宅地造成工事規制区域内で宅地造成工事を行おうとする場合に,許可を受けなければならないのは造成主だ(工事施行者ではない)。
造成主とは,宅地造成に関する工事の請負契約の注文者または請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。
工事施行者とは,宅地造成に関する工事の請負人または請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。
したがって,請負契約によって工事をする場合は,注文者が造成主になるから,注文者が許可を受ける必要がある。
請負契約によらないで自ら工事をする場合は,工事をする者が造成主と工事施行者を兼ねるから,その工事をする者が許可を受ける必要がある。
(2)
宅地造成工事規制区域内で宅地造成工事を行おうとする場合に,造成主が許可を受ける先は,知事だ。
ただし,地方自治法に基づく指定都市・中核市・特例市では,指定都市・中核市・特例市の市長の許可を受ける必要がある。
なお,造成主が国・都道府県・指定都市・中核市・特例市の場合は,知事(宅地造成が指定都市・中核市・特例市で行われる場合は,それぞれの市長)との協議が成立することを条件に,許可があったとみなされる。
(3)
宅地造成工事規制区域内で宅地造成工事を行おうとする場合に,許可を受けなければならない時期は,工事着手前だ。
宅地造成等規制法の許可をめぐる手続き
宅地造成等規制法の許可が必要な場合には,(1)許可の申請→(2)許可→(3)工事着手→(4)工事完了→(5)工事完了届→(6)検査→(7)検査済証交付→(8)工事完了公告,という手続きに沿ってしなければならない。
順番に説明する。
(1)
許可の申請
…許可の申請は,工事着手前に,造成主がしなければならない。
(2)
許可
@知事が許可する場合の基準は,次の通りだ。
・知事は,その宅地造成工事が,宅地造成工事の技術的基準に適合している場合でなければ,許可することができない。
したがって,許可を受けた後で行う,宅地造成工事規制区域内における宅地造成に関する工事は,すべて,宅地造成工事の技術的基準に適合しているものでなければならない。
・高さ5mを超える擁壁の設置など,一定の工事については,政令で定める資格を有する者の設計によるものでなければ,知事は,許可することができない。
したがって,許可を受けた後で行う,高さ5mを超える擁壁の設置など一定の工事は,政令で定める資格を有する者が設計したものでなければならない。
A知事が許可する場合は,その許可に条件を付けることができる。
(3)
工事着手
…知事の許可を受け工事着手した造成主に対して,知事は,工事の状況について報告を求めることができる。
(4)
工事完了
…造成主が工事を完了したときは,その旨を知事に届け出る必要がある。
この届出を工事完了届という。
(5)
工事完了届
…工事完了届があったときは,知事は,検査する必要がある。
(6)
検査
…検査した結果,その工事が一定の技術的基準に従い必要な措置が講じられているとき(検査が合格したとき)は,知事は,検査済証を交付する必要がある。
(7)
検査済証交付
…検査済証を交付した後,知事は,工事完了公告をする必要がある。
(8)
工事完了公告
…工事完了公告とは,許可に基づく工事が完成したと法律的に宣言することだ。
許可制度の趣旨に違反した場合の監督処分(行政処分)
知事は,許可制度の趣旨に違反した者に対して,次の監督処分(行政処分)ができる。
(1)
不正手段による許可取得または許可条件違反の場合は,造成主に対して,工事中または工事完了後に,その許可を取り消すことができる。
(2)
無許可または許可条件違反または技術的基準不適合の場合は,造成主または管理者または工事請負人に対して,工事中に,工事施行停止命令,擁壁排水施設設置命令などの防災措置命令を出せる。
(3)
無許可または検査未受検または技術的基準不適合の場合は,造成主または管理者または所有者または占有者に対して,工事完了後に,使用禁止命令,擁壁排水施設設置命令などの防災措置命令を出せる。
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