宅建試験・マトメ集 法令上の制限

presented by 宅建倶楽部


第2 土地取引の事前届出制

相場より高値での土地取引が,その後の土地取引のサンプルになるのを防ぐ手段で事後届出制より有効なのは,事前に,お上に取引価格等を届け出させることだろう。これが土地取引の事前届出制だ。別名,国土利用計画法第27条の4または第27条の7の事前届出制という。
事前届出制が適用される場所
事前届出制が適用される土地取引の規模
事前届出制が適用される土地取引の種類
事前届出をする者と事前届出の時期
事前届出の内容と事前届出をする先
事前届出をした後の取扱い
の順に説明して行く。

事前届出制が適用される場所

土地取引の事前届出制が適用されるのは,注視区域と監視区域だ。
注視区域での届出制を第27条の4の事前届出制,監視区域でのそれを第27条の7の事前届出制という。
・注視区域とは,地価が社会的,経済的事情の変動に照らして相当な程度を超えて上昇しまたは上昇するおそれがあり,これによって適正かつ合理的な土地利用の確保に支障が生ずるおそれがあると認められる区域だ。
・監視区域とは,地価が急激に上昇しまたは上昇するおそれがあり,これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域だ。

事前届出制が適用される土地取引の規模

(1)
事前届出制が適用される土地取引の規模は,次の通りだ。
@注視区域の,
・市街化区域内では………………………………… 2,000u以上の一団の土地
・市街化調整区域内または非未線引区域内では… 5,000u以上の一団の土地
・都市計画区域外(準都市計画区域を含む)では…10,000u以上の一団の土地
A監視区域では,@の届出対象面積を,知事が,都道府県の規則で引き下げた面積以上の一団の土地

(2)
(1)の一団の土地に当たるかどうかは,事後届出制の場合と違う。
事後届出制のように,「土地を取得した者が取得した土地」の合計面積で計算で計算するのではない。
事前届出制で,届出対象面積になるかどうかは,「土地を手放すことになる者または土地を取得することになる者のどちらかが動かす予定の土地」の合計面積で計算する。
例えば、注視区域かつ市街化区域内で,Aが3,000uの土地を1,000uずつB・C・Dに売却する場合は,土地を手放した者(A)が動かした土地の合計面積は2,000u以上なので,事前届出が必要になる(AB間,AC間,AD間3つの取引とも事前届出が必要になる)。
A――――1000u――――→B
A――――1000u――――→C     ※Aは合計3000u手放しているので届出必要 
A――――1000u――――→D
また,注視区域かつ市街化区域内で,隣接するA所有地とB所有地について,CがAから800uの土地を取得し,続いて,CがBから1,200uの土地を取得する場合は,土地を取得した者(C)が動かした土地の合計面積は2,000u以上なので,事前届出が必要になる(CA間,CB間の2つの取引とも事前届出が必要になる)。
A―――― 800u――――→C
B――――1200u――――→C    ※Cは合計2000u取得しているので届出必要 


事前届出制が適用される土地取引の種類

事前届出制が必要な土地取引の種類は,事後届出制が必要な土地取引の種類と基本的には同じだが,念のためもう一度書いておく。

(1)
事前届出が必要な土地取引の典型は売買契約だが,次の特殊な売買契約にも事前届出が必要だ。
@売買の予約
…この場合,売買を予約した段階で一度届出をすれば,後で買主が,その予約を本契約に直す権利(これを「売買の予約完結権」または「買主に所有権移転を請求する権利」という)を行使する際には、改めて届出をする必要がない。
A売買の予約完結権(所有権移転請求権)の譲渡
…この場合,売買を予約した段階で一度届出をしても,後で買主が,その予約を本契約に直す権利(「売買の予約完結権」または「買主に所有権移転を請求する権利」)を第三者に譲渡する段階で,もう一度届出が必要になる。
B土地区画整理事業の保留地の譲渡
C停止条件付売買
D譲渡担保

(2)
(1)で書いた売買契約の他に,次の土地取引にも事前届出が必要だ。
@交換契約
A代物弁済契約,代物弁済の予約契約
B借地権設定契約,地上権設定契約,賃借権設定契約
…これらは,対価として権利金その他の一時金の授受がある場合に限って,事前届出が必要な土地取引に当たる。

(3)
次の土地取引には,事前届出は不要だ。
@抵当権設定契約
A贈与契約
B信託契約
なお,信託を引き受けた者(受託者という。例えば信託銀行)が引受けた土地を第三者に売却する行為は,売買契約そのものなので,事前届出が必要だ。
C相続

(4)
売買契約,交換契約,代物弁済契約,代物弁済の予約契約,権利金その他の一時金の授受がある借地権設定契約・地上権設定契約・賃借権設定契約をしても,次の場合は,例外的に事前届出が不要になる。
@当事者の一方または双方が,国,都道府県,市町村,地方住宅供給公社等の場合
A民事調停法に基づく民事調停による場合
B農地法3条の許可を受けることを要する場合
C土地収用法による事業の認定の告示に係る事業の用に供される土地である場合
D遊休土地を買い取る場合
E事前確認制度が適用される場合


事前届出をする者と事前届出の時期

(1)
事前届出をする必要があるのは,契約の当事者(売買契約などによって土地を手放した者と土地を取得した者の両方)だ。
例えば、土地の売買契約をしたときは,売主(譲渡人)と買主(譲受人)の双方が,届け出ろということだ。

(2)
事前届出をしなければならない時期は,契約を締結する前だ。
だから,例えば売買の予約の場合は,売買予約という契約を締結する前に届け出る必要がある。


事前届出の内容と事前届出をする先

事前届出の内容と事前届出をする先は,事後届出の場合と同じだ
つまり…

(1)
事前届出の内容は,主として次の事項だ。
@対価の額
A土地の利用目的
B当事者の氏名・住所
なお,上の事項は文書(届出書)で届け出る必要がある。

(2)
事前届出は,その土地が所在する市町村の長を経由して,知事に対してするのが原則だ。
ただし,その土地が地方自治法に基づく指定都市に所在する場合は,知事ではなく,指定都市の長に直接届け出る必要がある。


事前届出をした後の取扱い

(1)
事前届出をした後の取扱いは,次の通りだ。
@知事は,一定の要件に該当するときは,届出後6週間以内に,土地利用審査会の意見を聴いて,契約の中止,予定対価の引き下げ,土地の利用目的について,勧告できる。
なお,知事が勧告できるのは,事後届出の場合と違って土地の利用目的についてだけはない。契約の中止,予定対価の引き下げも勧告できる。
A届出をした当事者は,届出をした日から起算して6週間は,契約の締結が禁止される。
この6週間の契約締結禁止に違反して契約を締結した場合には罰則(50万円以下の罰金)が適用されるが,その土地取引は有効となる。
なお,6週間経過する前に勧告または勧告しない旨の通知を受けた場合は,6週間待たなくても契約を締結できる。
B知事は,勧告に基づいて契約の締結が中止された場合に,必要があると認めるときは,その土地に関する権利の処分についてのあっせんその他の措置を講ずるよう努める必要がある。
C勧告を受けた者がその勧告に従わないときは,知事は、その旨および勧告の内容を公表できる。
なお,勧告に従わないとしても,その者に罰則は適用されず,その土地取引も有効だ。
事後届出の場合と同じだ。

(2)
次の場合は,事前届出を一度して知事から勧告を受けなかった場合でも,再び届け出る必要がある。
@予定対価の額を増額変更する場合
…予定対価の額を減額変更する場合は,再度の届出は不要だ。
A土地の利用目的を変更する場合
B契約の相手方を変更する場合

(3)
事前届出が必要とされる土地取引なのに,届出をしなかった場合でも,その土地取引は有効だ。
事後届出の場合と同じだ。
ただ,届出義務違反をまったく放任したのでは国土利用計画法自体の存在意義がなくなるので,届出義務違反には事後届出の場合と同じ罰則の適用がある。
なお,届出義務違反の場合は,当事者を代理した者にも,当事者と同じ罰則が適用される。



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