宅建試験・マトメ集 法令上の制限
presented by 宅建倶楽部
第3章 国土利用計画法
適正相場1u10万円の土地が20万円で取引されたとする。世間ではそれをマネして,似たような土地について今度は1u20万円前後で取引しようとする傾向がある。その結果,日本全体の土地がジワジワと値上がりしてくる。
そこで,相場より高値での土地取引が,その後の土地取引のサンプルになるのを防ぐことを目的として出来たのが国土利用計画法だ。
その目的を達成するために,国土利用計画法は,次の3つの手段を用意している。
第1 土地取引の事後届出制
第2 土地取引の事前届出制
第3 土地取引の許可制
順番に説明して行く。
第1 土地取引の事後届出制
相場より高値での土地取引が,その後の土地取引のサンプルになるのを防ぐ1つの手段は,大規模な土地取引について,事後的にでもいいから,お上に取引価格等を届け出させることだろう。これが土地取引の事後届出制だ。別名,国土利用計画法第23条の事後届出制という
事後届出制が適用される場所
事後届出制が適用される土地取引の規模
事後届出制が適用される土地取引の種類
事後届出をする者と事後届出の時期
事後届出の内容と事後届出をする先
事後届出をした後の取扱い
の順に説明して行く。
事後届出制が適用される場所
土地取引の事後届出制が適用されるのは,一般の場所だ。
ここで「一般の場所」とは,注視区域,監視区域,規制区域のどれにも属しない場所を指す。
・注視区域とは,地価が社会的,経済的事情の変動に照らして相当な程度を超えて上昇しまたは上昇するおそれがあり,これによって適正かつ合理的な土地利用の確保に支障が生ずるおそれがあると認められる区域だ。
注視区域での一定の取引は第2 土地取引の事前届出制の対象になる。
・監視区域とは,地価が急激に上昇しまたは上昇するおそれがあり,これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域だ。
監視区域での一定の取引も第2 土地取引の事前届出制の対象になる。
・規制区域とは,土地の投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われまたは行われるおそれがあり,かつ,地価が急激に上昇しまたは上昇するおそれがあると認められる区域だ。
規制区域での一定の取引は第3 土地取引の許可制の対象になる。
バブルがはじけた今日(こんにち),地価が上昇したり土地の投機的取引が行われている所は余りないので,日本中のほとんどは「一般の場所」に属し,事後届出制が適用されると思ってよい。
事後届出制が適用される土地取引の規模
(1)
土地取引の事後届出制は,小規模な土地取引には適用されない。小規模ではその後の土地取引のサンプルにならないからだ。
取引される土地が都市計画法の都市計画区域の内にあるかどうかで,次の規模の土地取引について,事後届出制が適用されることになっている。
・市街化区域内では………………………………… 2,000u以上の一団の土地
・市街化調整区域内または非未線引区域内では… 5,000u以上の一団の土地
・都市計画区域外(準都市計画区域を含む)では…10,000u以上の一団の土地
(2)
(1)の2,000u・5,000u・10,000u以上の一団に当たるかどうかは,「土地を取得した者が取得した土地」の合計面積で計算する。
例えば,市街化区域内で,AがBから1,000uずつ3回に分けて取得した場合には,土地を取得した者(A)が取得した土地の合計面積は2,000u以上なので,事後届出が必要になる。
B――――1000u――――→A
B――――1000u――――→A ※Aは合計3000u取得しているので届出必要
B――――1000u――――→A
また,市街化区域内で,AがB・C・Dから1,000uずつ取得した場合も,土地を取得した者(A)が取得した土地の合計面積は2,000u以上なので,事後届出が必要になる。
B――――1000u――――→A
C――――1000u――――→A ※Aは合計3000u取得しているので届出必要
D――――1000u――――→A
なお,市街化区域内で,B・C・DがAから1,000uずつ取得した場合には,土地を取得した者(B・C・D)が取得した土地の合計面積は2,000u未満なので,事後届出はいらない。
A――――1000u――――→B
A――――1000u――――→C ※B・C・Dは1000uしか取得していないので届出不要
A――――1000u――――→D
事後届出制が適用される土地取引の種類
(1)
事後届出が必要な土地取引の典型は売買契約だが,次の特殊な売買契約にも事後届出が必要だ。
@売買の予約
…この場合,売買を予約した段階で一度届出をすれば,後で買主が,その予約を本契約に直す権利(これを「売買の予約完結権」または「買主に所有権移転を請求する権利」という)を行使する際には、改めて届出をする必要がない。
A売買の予約完結権(所有権移転請求権)の譲渡
…この場合,売買を予約した段階で一度届出をしても,後で買主が,その予約を本契約に直す権利(「売買の予約完結権」または「買主に所有権移転を請求する権利」)を第三者に譲渡する段階で,もう一度届出が必要になる。
B土地区画整理事業の保留地の譲渡
C停止条件付売買
D譲渡担保
(2)
(1)で書いた売買契約の他に,次の土地取引にも事後届出が必要だ。
@交換契約
A代物弁済契約,代物弁済の予約契約
B借地権設定契約,地上権設定契約,賃借権設定契約
…これらは,対価として権利金その他の一時金の授受がある場合に限って,事後届出が必要な土地取引に当たる。
(3)
次の土地取引等には,事後届出は不要だ。
@抵当権設定契約
A贈与契約
B信託契約
…なお,信託を引き受けた者(受託者という。例えば信託銀行)が引受けた土地を第三者に売却する行為は,売買契約そのものなので,事後届出が必要だ。
C相続
(4)
売買契約,交換契約,代物弁済契約,代物弁済の予約契約,権利金その他の一時金の授受がある借地権設定契約・地上権設定契約・賃借権設定契約をしても,次の場合は,例外的に事後届出が不要になる。
@注視区域,監視区域,規制区域にある土地について,売買契約等をした場合
A当事者の一方または双方が,国,都道府県,市町村,地方住宅供給公社等の場合
B民事調停法に基づく民事調停による場合
C農地法3条の許可を受けることを要する場合
D土地収用法による事業の認定の告示に係る事業の用に供される土地である場合
E遊休土地を買い取る場合
事後届出をする者と事後届出の時期
(1)
事後届出をする必要があるのは,権利取得者(売買契約などによって土地に関する権利の移転または設定を受けることとなる者)だ。
例えば、土地の売買契約をしたときは,買主が,届け出ろということだ。
(2)
事後届出をしなければならない時期は,契約を締結した日から2週間以内だ。
事後届出の内容と事後届出をする先
(1)
事後届出の内容は,主として次の事項だ。
@対価の額
A土地の利用目的
B当事者の氏名・住所
なお,上の事項は文書(届出書)で届け出る必要がある。
(2)
事後届出は,その土地が所在する市町村の長を経由して,知事に対してするのが原則だ。
ただし,その土地が地方自治法に基づく指定都市に所在する場合は,知事ではなく,指定都市の長に直接届け出る必要がある。
事後届出をした後の取扱い
(1)
事後届出をした後の取扱いは,次の通りだ。
@知事は,一定の要件に該当するときは,届出後3週間以内に,土地利用審査会の意見を聴いて,土地の利用目的について,必要な変更をすべきことを勧告できる。
なお,知事が勧告できるのは,土地の利用目的についてだけだから,対価の額が不適正でも知事は勧告できない。
A知事は,土地の利用目的について,その土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために必要なときは,必要な助言ができる。
B知事は,勧告に基づいて土地の利用目的が変更された場合に,必要があると認めるときは,その土地に関する権利の処分についてのあっせんその他の措置を講ずるよう努める必要がある。
C勧告を受けた者がその勧告に従わないときは,知事は、その旨および勧告の内容を公表できる。
なお,勧告に従わないとしても,その者に罰則は適用されず,その土地取引も有効だ。
(2)
事後届出が必要とされる土地取引なのに,届出をしなかった場合でも,その土地取引は有効だ。
ただ,勧告無視と違い,届出義務違反をまったく放任したのでは国土利用計画法自体の存在意義がなくなるので,届出義務違反には罰則の適用がある。
なお,届出義務違反の場合は,権利取得者を代理した者にも,権利取得者と同じ罰則が適用される。
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