宅建試験・参考書 宅建業法No.20

presented by 宅建倶楽部

履行確保法

1 履行確保法とは

民法の原則では,売主が瑕疵担保責任を負う期間は,買主が瑕疵の存在を知った時から1年までだが,新築住宅の主要部分についてはこの期間じゃ短かすぎるとして,平成11年に特別法ができた。その法律を,住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)という。
住宅品確法では,売主が瑕疵担保責任を負う期間は,新築住宅の主要部分については,新築住宅が買主等に引渡されてから10年までとなっている。
立法者もそれでうまく行くと考えていたが,その後,耐震偽装問題が明らかになり,震度5程度で倒壊する恐れのあるマンションが建てられ世間を騒がせた。
この事件をきっかけに,住宅品確法だけでは国民生活の安定向上(一般消費者の保護)等に不足することが認識された。
なぜなら,売主の瑕疵担保責任を負う期間を10年に延ばしても,売主が損害賠償の負担に耐えられないで倒産してしまったら,住宅品確法は「絵に描いた餅」で終わってしまうからだ。
そこで,住宅品確法と相まって(住宅品確法とセットになって),新築住宅の一般買主の利益の保護等を図る法律が必要となった。これが履行確保法だ。

履行確保法が,新築住宅の一般買主の利益の保護等を図る方法は,
宅建業者に,
  @住宅販売瑕疵担保保証金の供託
  A住宅販売瑕疵担保責任保険の加入
の,どちらかを要求することだ。これらを資力確保措置の要求という。

(1)
これらが要求されるのは,宅建業者が「自ら売主」となり,かつ,「買主が宅建業者でない」場合に限られる。履行確保法は一般買主の利益の保護等を図る法律なので,買主が宅建業者の場合には上の@もAも要求されない。

(2)
これらが要求されるのは,宅建業者が「自ら売主」となる場合なので,宅建業者が媒介や代理を行う場合には上の@もAも要求されない。
なお,媒介や代理を行う宅建業者でも,住宅品確法や履行確保法の瑕疵担保責任に関する重要事項の説明義務や,37条書面の交付義務は,免れることが出来ないので,注意。

2 住宅販売瑕疵担保保証金の供託

宅建業者は,各基準日(毎年3月31日および9月30日をいう)において,その基準日前10年間に,自ら売主となる売買契約に基づいて買主に引き渡した新築住宅について,その買主に対する瑕疵担保責任の履行(資力)を確保するため,住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしていなければならない。
ただし, 住宅販売瑕疵担保責任保険の加入によって履行を確保している場合は,住宅販売瑕疵担保保証金の供託は不要だ。

(1)
住宅販売瑕疵担保保証金の額は,基準日における新築住宅の合計戸数に応じ,販売新築住宅の合計戸数を基礎として,新築住宅に住宅品確法で定める隠れた瑕疵があった場合に生ずる損害の状況を勘案して,政令で定めるところにより算定する額(基準額という)以上の額とされる。
要するに,住宅販売瑕疵担保保証金の額は,過去10年間の供給戸数に応じて決まるということだ。

(2)
住宅販売瑕疵担保保証金の供託は金銭に限らず,国債証券・地方債証券など,国土交通省令で定める有価証券でもできる(金銭と有価証券を併用して,あるいは100%有価証券で供託してもよい)。
有価証券で供託する場合の,その有価証券の価額(評価額)は次の通り。
@国債証券………………………………………額面金額そのまま(100%)
A地方債証券・政府が保証した債券……………額面金額の90%
B@A以外の債券………………………………額面金額の80%

(3)
世の中のペーパーレス化の流れに沿って,ここでは振替債(証券会社等が振替口座簿によってお金を管理し,証券が発行されないもの)も有価証券に含むことになっている。振替債の場合は,証券が発行されないので,(2)@〜Bの額面金額は「その振替口座簿に記載・記録された金額」と読み替えることになっている。

(4)
住宅販売瑕疵担保保証金を供託する所は,本店(主たる事務所)のもよりの供託所だ。

3 住宅販売瑕疵担保責任保険の加入

自ら売主として新築住宅を販売する宅建業者でも,住宅販売瑕疵担保責任保険に加入すれば,その分の住宅販売瑕疵担保保証金の供託はしないで良い。保険金によって履行(資力)が確保されるからだ。
なお,住宅瑕疵担保責任保険への加入は,国土交通大臣が指定する保険法人とする必要がある。そして,この責任保険の加入によって履行を確保した場合は,保険証券又はこれに代わるべき書面(保険法人が発行する証明書)を買主に交付しなければならない。

4 免許権者への届出

自ら売主として新築住宅を引き渡した宅建業者は,基準日(毎年3月31日および9月30日)ごとに,住宅販売瑕疵担保保証金の供託および住宅販売瑕疵担保責任保険の加入状況について, 基準日から3週間以内までに,免許権者に届け出なければならない。
この届出は,履行を確保する措置が適正に行われているか,免許権者が把握するためのものだ。

5 自ら売主となる新築住宅の売買契約の新たな締結の制限

自ら売主となる新築住宅を引き渡した宅建業者は,履行を確保する措置(住宅販売瑕疵担保保証金の供託または住宅販売瑕疵担保責任保険の加入)をし,かつ,免許権者に届出をしなければ,その基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後においては,新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはならない。
ただし,その基準日後にその基準日に関係する履行を確保する措置の不足を補い,かつ,その旨について免許権者の「確認」を受けたときは,その確認を受けた日以後においては,新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結しても良い(もっとも,履行を確保する措置を行わなかったことを理由に,宅建業法に基づく業務停止処分を受けているときは,不足を補い,かつ,免許権者の確認を受けても,売買契約を締結できない)。

6 買主への説明

消費者保護の観点から,自ら売主として新築住宅を販売する宅建業者は,買主に対して,その新築住宅が住宅販売瑕疵担保保証金の供託・住宅販売瑕疵担保責任保険の加入のいずれによって履行が確保されているかを説明しておく必要がある。
この説明によって,宅建業者が瑕疵担保責任を果たせなくなった場合に,買主は保証金の還付請求や保険金の請求をスムースに行えるようになるわけだ。

(1)
住宅販売瑕疵担保保証金を供託した場合は,次の説明をする必要がある。
@宅建業法に基づく重要事項の説明義務
…「物件の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し,保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか,及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要」がこれに該当する。
A宅建業法に基づく37条書面の交付義務
…「宅地建物の瑕疵を担保すべき責任,または,その責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置について定めがあるときは,その内容」がこれに該当する。
B履行確保法に基づく書面の交付義務(履行確保法15条)
…供託所の所在地等に関する事項を記載した書面を交付して説明する必要がある。これは宅建業法上の供託所等の説明義務と同じ趣旨で出来た制度だ。したがって,取引が成立するまでの間(契約締結前)に行わなければならない。しかし,宅建業法上の供託所等の説明義務のように口頭で説明するだけでは足りず,書面を交付しなければならない点に特徴がある。

(2)
住宅販売瑕疵担保責任保険に加入した場合は,次の説明をする必要がある。
@宅建業法に基づく重要事項の説明義務
…(1)の@と同じだ。
A宅建業法に基づく37条書面の交付義務
…(1)のAと同じだ。
B履行確保法に基づく書面の交付義務(履行確保法11条2項)
…保険証券又はこれに代わるべき書面(保険法人が発行する証明書)を買主に交付する必要がある。

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