宅建試験・過去問解説集 民法(権利関係)・平成11年
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※省略されている問題(解説)があります。
平成11年[問 1] 制限行為能力者が契約にタッチする場合
次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか。
(1)20歳に達した者は,成年とされる。
(2)15歳に達した者は,父母の同意を得て,婚姻をすることができる。
(3)未成年者が婚姻をしたときは,成年に達したものとみなされる。
(4)15歳に達した者は,父母の同意を得なくても,遺言をすることができる。
平成11年[問 1] 解説
(1)正しい。成人(成年)になるのは20(はたち)からだ。
(2)誤り。日本の法律(民法)では、結婚できるのは、男は18,女は16となってる。だから15では結婚できない。なお、未成年者(20にならない者)は、父母の同意を得て結婚することになってるが、これは結婚を慎重にさせるための建前(たてまえ)にすぎない。親がいない未成年者もいるわけだから、そういう未成年者は、男18,女16になれば、誰の同意がなくても結婚できる。
(3)正しい。20にならなくても、結婚して一家をかまえるくらいの人は、「心の発達」が成人と同じとみられる。だから、成年に達したとみなされる。宅建業法上、専任の取引主任者は「成年者」でなければならないが、結婚すれば、未成年者でも専任の取引主任者になれる、というのが成年に達したとみなされる例だ。この決まりは、心の発達の話だから、未成年者が結婚しても、成人のようにお酒やタバコは吸えないので念のため。
(4)正しい。15と言えば中学3年生だ。このくらいの年になれば、未成年者でも一人で財産の価値を判断できる。そこで、15になれば誰の同意がなくても、遺言(ゆいごん)できることになってる。
正解(2)
平成11年[問 2] 相隣関係
土地の相隣関係に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。ただし,民法の規定と異なる慣習については考慮しないものとする。
(1)土地の所有者は,隣地との境界近くで建物を築造し,又は修繕する場合でも,隣人自身の承諾を得たときを除き,隣地に立ち入ることはできない。
(2)土地の所有者は隣地の所有者と共同の費用で界標(境界を標示する物)を設置することができるが,その設置工事の費用は,両地の広さに応じて分担しなければならない。
(3)隣地の竹木の根が境界線を越えて侵入している場合は,これを竹木の所有者に切り取るように請求することができるが,自分で切り取ることはできない。
(4)他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む)を境界線から1m未満の距離に設ける場合は,目隠しを付けなければならない。
平成11年[問 2] 解説
相隣関係というのは、隣どうしの関係のことだが、要するに、よほど我慢できないことを除いて,隣どうしは譲り合いの精神で仲良くしろ、という民法の決まりだ。
(1)誤り。建物を建てたりするときは、隣りの土地を使う必要がある場合が多い。そんな場合に隣人がイヤだということを許すと、譲り合いの精神に反する。そこで、隣人の承諾がなくても隣りの土地を使えることになってる。
(2)誤り。プライバシーという点から、隣りとの境に塀を設置できるが、費用は、土地の広さに応じて分担するのではない。境界線、つまり塀の長さは土地の広さに関係なく同じだからだ。費用は、隣同士で平等に負担する。
(3)誤り。隣りの竹や木の根っこが境界線を越えて侵入している場合は,自分で切り取れる。民法は根っこの侵入は、よほど我慢できないことと考え,自分で切り取れると決めた。現代人の常識に反する結論だが、民法ができた明治時代の常識には合っていた。昔は農業社会だったから、隣りの根っこの侵入イコール自分の土地の肥料を奪い取る、と考えられた。自分がまいた肥料を吸いながら隣りの根っこが育つのでは農業が成り立たない。だから緊急性を要するので自分で切り取れるとなった。なお、隣りの竹や木の「枝」が境界線を越えて侵入している場合は,自分で切り取れないことと区別しておこう。「枝」が境界線を越えても、せいぜい日当たりが悪くなるくらいで、それは我慢できる範囲だから,隣人に切り取るよう請求できるだけとなる。
(4)正しい。プライバシーという点から、隣りをのぞけないようにするのが仲良くするコツというわけだ。目隠しの費用は、窓や縁側を設ける人が負担する。1m未満という数字が現在の社会に合うかどうかは学者の間でも議論があるところだが、法律が存在する以上、覚えるしかない。
正解(4)
平成11年[問 3] 相続
相続に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)相続開始の時において相続人が数人あるとき,遺産としての不動産は、相続人全員の共有に属する。
(2)被相続人は,遺言で,遺産の分割の方法を定めることができ,また相続開始の時から5年を超えない期間内で遺産の分割を禁ずることもできる。
(3)遺産の分割について共同相続人間に協議が調わないとき,各共同相続人は,その分割を,相続開始地の地方裁判所に請求することができる。
(4)相続開始の時から3年以上経過した後に遺産の分割をしたときでも,その効力は,第三者の権利を害しない範囲で,相続開始の時にさかのぼって生ずる。
平成11年[問 3] 解説
(1)正しい。「相続開始の時」というのは、相続される人(被相続人)が死んだ時を指す。お父さんが死んだ時に相続人として2人の子供がいる、というのが(1)の舞台だ。お父さんが遺産としてA・B2つの不動産を残していた場合、2つの不動産とも、2人の子供が「共有」し,その後で、遺産分割ということをして、A・Bをどのように分けるかを決めていくのが、相続のやり方だ。
(2)正しい。相続される人は,遺言で,遺産分割のやり方を決定できる。また、相続開始の時から5年を超えない範囲で遺産の分割を禁ずる、という遺言もできる。(1)で述べたように遺産は相続人全員の「共有」だが、民法の共有の決まりでは,5年を超えない範囲で共有物の分割を禁止できるからだ。お父さんは死ぬ前に死後のことをいろいろ遺言できるのだ。
(3)誤り。遺産分割について相続人の意見がまとまらない以上,裁判所に決めてもらうしかないが、その場合,各相続人は,相続が開始した場所を管轄する「家庭裁判所」に、頼める。地方裁判所に頼むのではない。家庭内のことを扱う裁判所は家庭裁判所だ。
(4)正しい。(1)で述べたように遺産としての不動産は相続人全員の「共有」だが、民法の共有の決まりでは,共有物は、いつでも分割を請求できるので、相続開始から3年以上経過した後の遺産分割も法律的な効力を生ずる。そして効力が生ずる時期は,相続開始の時になる。遺産分割した時ではなく、お父さんが死んだ時にさかのぼるのだ。以上について、無関係な人(第三者)の権利を害せないのは当然だ。
正解(3)
平成11年[問 4] 抵当権
Aは,Bからの借入金で建物を建築し,その借入金の担保として当該建物に第一順位の抵当権を設定し,その登記を行った。この登記の後,Aが,Cとの間で本件建物の賃貸借契約を締結した場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち,正しいものはどれか。
(1)AがCに対して賃貸借契約に基づき賃料債権を有している場合,Bは,建物に対する抵当権に基づく差押えの前であっても,当該賃料債権を抵当権に基づき差し押えることができる。
(2)AC間の賃貸借契約の契約期間が2年であった場合,Bが抵当権を実行しても,契約締結時から3年を経過した時点で,その賃貸借契約は終了する。
(3)AC間の賃貸借契約の契約期間が4年であった場合でも,契約締結時から3年間は,Cは,Bに対して賃借権を対抗することができる。
(4)AC間で契約期間を3年とする賃貸借契約を締結したため,建物の担保価値が下落し,Bの被担保債権全額の弁済を受けられなくなった場合でも,Bは,契約締結時から3年間は,Cの賃借権を認めるほかはない。
平成11年[問 4] 解説

(1)正しい。抵当権には物上代位性がある。つまり、抵当に入れられた物(建物)から生まれた物(家賃)にも、抵当権の力が及ぶ。だから、抵当権者Bは、建物自体の抵当権を実行する前でも,抵当権を理由に,家賃を差し押えることができる。
(2)誤り。以前は、「短期賃貸借の保護」という制度があり、Cは、期間3年以内の建物賃貸借を抵当権者(B)に対抗できた。しかし、この制度は平成16年4月1日から廃止された。したがって、Bが抵当権を実行すれば、3年経過するまでもなくAC間の賃貸借契約は終了する。
(3)誤り。「短期賃貸借の保護」が廃止されたので、建物賃貸借の期間が何年であっても、CはBに賃借権を対抗できない。
(4)誤り。「短期賃貸借の保護」が廃止され、CはBに賃借権を対抗できないので、BはCの賃借権を認める必要はない。建物の担保価値が下落しようがしまいが、同じだ。
正解(1)
平成11年[問 5] 弁済
Aが,Bに対して不動産を売却し,所有権移転登記及び引渡しをした場合のBの代金の弁済に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)Bの親友Cが,Aに直接代金の支払いを済ませても,それがBの意思に反する弁済である場合には,Bの代金債務は消滅しない。
(2)Aが,Bに対し代金債権より先に弁済期の到来した別口の貸金債権を有する場合に,Bから代金債権の弁済として代金額の支払いを受けたとき,Aは,Bの意思に反しても,代金債権より先にその貸金債権に充当することができる。
(3)Bが,「AからDに対して代金債権を譲渡した」旨記載された偽造の文書を持参した代金債権の準占有者Dに弁済した場合で,Bが善意無過失であるとき,Bは,代金債務を免れる。
(4)Bの友人Eが,代金債務を連帯保証していたためAに全額弁済した場合,Eは,Aの承諾がないときでも,Aに代位する。
正解(2)
平成11年[問 6] 複合問題
AとBは,A所有の土地をBに売却する契約を締結し,その契約に「AがCからマンションを購入する契約を締結すること」を停止条件として付けた(仮登記の手続きは行っていない)場合に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか。
(1)停止条件の成否未定の間は,AB間の契約の効力は生じていない。
(2)AB間の契約締結後に土地の時価が下落したため,停止条件の成就により不利益を受けることとなったBが,AC間の契約の締結を故意に妨害した場合,Aは,当該停止条件が成就したものとみなすことができる。
(3)停止条件の成否未定の間は,Aが当該A所有の土地をDに売却して所有権移転登記をしたとしても,Aは,Bに対して損害賠償義務を負うことはない。
(4)停止条件の成否未定の間に,Bが死亡した場合,Bの相続人は,AB間の契約における買主としての地位を承継することができる。
正解(3)
平成11年[問 7] 代理
Aが,A所有の1棟の賃貸マンションについてBに賃科の徴収と小修繕の契約の代理をさせていたところ,Bが,そのマンションの1戸をAに無断で,Aの代理人として賃借人Cに売却した。この場合,民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
(1)Aは,意外に高価に売れたのでCから代金を貰いたいという場合,直接Cに対して追認することができる。
(2)Cは,直接Aに対して追認するかどうか相当の期間内に返事をくれるよう催告をすることができるが,Cがこの催告をするには,代金を用意しておく必要がある。
(3)Aが追認しない場合でも,CがBに代理権があると信じ,そう信じることについて正当な理由があるとき,Cは,直接Aに対して所有権移転登記の請求をすることができる。
(4)Cは,Bの行為が表見代理に該当する場合であっても,Aに対し所有権移転登記の請求をしないで,Bに対しCの受けた損害の賠償を請求できる場合がある。
平成11年[問 7] 解説

(1)正しい。Bは,家賃の徴収と小修繕しか代理できないのに,マンションを勝手にCに売っちゃったので,無権代理だ。無権代理された場合でも,本人は後でOK(追認)できる。代理制度は本人の利益のためにあり,本人がCから代金をもらいたいと思ってる以上,追認を認めるのが本人の利益だからだ。そして,このOK(追認)は,BとCのどちらに対してでもできる。
(2)誤り。無権代理された場合,本人は追認しないこともできる。相手の立場は,本人が追認するかどうかで大きく違ってくる(本人が追認すればCはそのマンションを買えるが,追認しなければ買えない)。そこで民法は,Cの立場を安定させるために,Aに対してOKするかどうか、ふさわしい期間内に返事をくれるよう要求できる権利を与えた。これを無権代理の相手方の催告権という。ところで,この催告権はCの立場を安定させるためにあるから,CがAに対して返事を要求するには,代金まで用意しておく必要はない。
(3)正しい。本人Aが追認しないとき,相手方Cは,Aに登記の移転を請求できないのが原則だ。でも,Bがマンションを売れたのは,Aにも責任がある(Aが印鑑証明などの重要書類を不用意にBに預けておいたから,Bが勝手なことをできたはず)。しかも,Cには全然責任がない(Cは,Bに代理する資格があると信じ,そう信じることについてもっともな理由があるのだから)。このように,無権代理について本人に責任があり相手方に責任がない場合は,相手方を保護するため,Cは,Aに登記の移転を請求できることになっている。以上の取扱いを,法律用語では表見代理という。
(4)正しい。表見代理は相手方Cを保護する制度なので,Cが希望すれば,Aに登記の移転を請求しないで,勝手なことをした(無権代理をした)Bに,損害賠償を請求することもできる。
正解(2)
平成11年[問 8] 契約の一般論
同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)宅地の売買契約における買主が,代金支払債務の弁済期の到来後も,その履行の提供をしない場合,売主は,当該宅地の引渡しと登記を拒むことができる。
(2)宅地の売買契約が解除された場合で,当事者の一方がその原状回復義務の履行を提供しないとき,その相手方は,自らの原状回復義務の履行を拒むことができる。
(3)建物の建築請負契約の請負人が,瑕疵(かし)修補義務に代わる損害賠償義務について,その履行の提供をしない場合,注文者は,当該請負契約に係る報酬の支払いを拒むことができる。
(4)金銭の消費貸借契約の貸主が,借主の借金に係る抵当権設定登記について,その抹消登記手続の履行を提供しない場合,借主は,当該借金の弁済を拒むことができる。
正解(4)
平成11年[問 9] 不法行為
Aの被用者Bが,Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為をし,CからAに対し損害賠償の請求がされた場合のAの使用者責任に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)Bの行為が,Bの職務行為そのものには属しない場合でも,その行為の外形から判断して,Bの職務の範囲内に属すると認められるとき,Aは,Cに対して使用者責任を負うことがある。
(2)Bが職務権限なくその行為を行っていることをCが知らなかった場合で,そのことにつきCに重大な過失があるとき,Aは,Cに対して使用者責任を負わない。
(3)Aが,Bの行為につきCに使用者責任を負う場合は,CのBに対する損害賠償請求権が消滅時効にかかったときでも,そのことによってAのCに対する損害賠償の義務が消滅することはない。
(4)AがBの行為につきCに対して使用者責任を負う場合で,AがCに損害賠償金を支払ったときでも,Bに故意又は重大な過失があったときでなければ,Aは,Bに対して求償権を行使することができない。
平成11年[問 9] 解説
使用者責任というのは,従業員が不法行為を行ったときに,従業員とは別に,その従業員を雇っている使用者が損害賠償責任を負うことをいう。一般的に従業員よりお金がある使用者に賠償責任を負わせることで,何も責任のない被害者を厚く保護するためにある。
(1)正しい。使用者責任は本来,従業員が担当する仕事に対する責任だ。でも,使用者責任は被害者を厚く保護するためにあるので,責任の範囲が広がり,従業員の担当そのものでない場合でも,部外者が判断して,従業員の担当であると見えるときには,使用者責任を負う。
(2)正しい。使用者責任は,何も責任のない被害者を厚く保護するためにあるから,責任のある被害者には使用者責任を負わないでよい。Cは,Bが勝手にその取引を行っていることを知らなかったとしても,そのことに重大な不注意(過失)があるので,責任があると言える。だから,AはCに使用者責任を負わない。
(3)正しい。使用者責任は,従業員とは別に負う責任なので,被害者の損害賠償請求権も別に考える必要がある。だから,被害者の従業員に対する損害賠償請求権が時効になったとして,そのことによって使用者の被害者に対する損害賠償義務が消滅することはない。
(4)誤り。使用者責任は,何も責任のない被害者を厚く保護するためにある。従業員の不法行為責任(損害賠償義務)を免除する制度ではない。だから,使用者が被害者に損害賠償したときは,使用者が立て替え払いしたことになり,使用者は従業員にその分の弁償を請求できる。従業員がわざと又は重大な不注意(過失)で不法行為を行った事情がなくても,Aは,Bに弁償させることができる。
正解(4)
平成11年[問 10] 契約が約束通り守られない場合
AからBが建物を買い受ける契約を締結した場合(売主の担保責任についての特約はない)に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)この建物がCの所有で,CにはAB間の契約締結時からこれを他に売却する意思がなく,AがBにその所有権を移転することができない場合でも、AB間の契約は有効に成立する。
(2)Aが,この建物がAの所有に属しないことを知らず,それを取得してBに移転できない場合は,BがAの所有に属しないことを知っていたときでも,Aは,Bの受けた損害を賠償しなければ,AB間の契約を解除することができない。
(3)AがDに設定していた抵当権の実行を免れるため,BがDに対しAの抵当債務を弁済した場合で,BがAB間の契約締結時に抵当権の存在を知っていたとき,Bは,Aに対し,損害の賠償請求はできないが,弁済額の償還請求はすることができる。
(4)Bが,この建物の引渡し後,建物の柱の数本に,しろありによる被害があることを発見した場合は,AがAB間の契約締結時にこのことを知っていたときでないと,Bは,Aに損害賠償の請求をすることはできない。
平成11年[問 10] 解説
売主の担保責任の問題だが,これは,変なものを売った売主の責任だ。売主の担保責任について特別の約束(特約)がないときは,民法が決めたように取り扱われる。特別の約束があれば約束通りになるが,本問では,それを考えないで良いということだ。
(1)正しい。AがBに売ったのはCの建物だというのだから,変なものを売った場合の代表だ。こういうのを「他人の物の売買」というが,こんな変な売買でも,契約は有効になる。Cが売るつもりがあったかどうかに関係なく,他人の物の売買は有効だ。なぜなら,AとBに売り買いの意思がある以上,民法は当事者(AとB)の自由意思を尊重する法律なので,無効にする理由がないからだ。なお,Cに売るつもりがない(1)では,たとえ契約が有効でも買主Bはその建物を取得できない。
(2)誤り。「Aが,この建物が自分のものでないことを知らない」というのだから,(2)でも他人の物の売買が行われている。他人の物を売ったため買主に渡せない場合,売主が,それを知らなければ,売主は,契約を解除できる。他人の物を売ったことを知らない,というのは変な話だが,世の中に全然ないとも言い切れないので,民法はこういう制度を用意している。この場合,買主の方が他人の物であることを知っていたときは,買主を保護する必要はないので,売主は,損害賠償などしないで解除できる。
(3)誤り。これは,買主が売主の借金を立替払いした場合なので,売主にとっては情けない話だ。でも,買主には重大問題だ。立替払いしないと,Dに抵当権を実行されて,Bは,せっかく買った建物を失ってしまうからだ。そこで民法は,たとえ抵当権の存在を知っていた買主でも,売主に損害賠償を請求できるとしている。なお,Bは立替払いしたのだから,その分の弁償を請求できる点では,(3)は正しい。
(4)誤り。しろありが喰った建物を売ったというのだから,これも変なものを売った場合の代表だ。こういう場合に売主が負う責任を「瑕疵担保責任」という。瑕疵担保責任に限らず売主の担保責任は,売主に全然責任がなくても,売主が負う責任だ。だから,Aがしろあり被害を知らないでBに売ったとしても,Aは,瑕疵担保責任を負う(責任の内容はAの損害賠償の義務など)ので,Bは,損害賠償の請求ができる。
正解(1)
平成11年 [問 11] 不動産登記法
土地の合筆の登記に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
(1)所有権の登記がある土地と所有権の登記がない土地を合併する合筆の登記をすることはできない。
(2)地目が田である土地と地目が宅地である土地を合併する合筆の登記をすることはできない。
(3)所有権の登記名義人が異なる土地を合併して共有地とする合筆の登記をすることはできない。
(4)承役地である地役権の登記がある土地と地役権の登記がない土地を合併する合筆の登記をすることはできない。
平成11年 [問 11] 解説
不動産登記法の本質は,登記簿を「分かりやすくする」ことにある。そこで,複数の土地を合併して登記を1つにすること(土地の合筆の登記をすること)は,それによって土地登記簿が「分かりにくくなる」場合は禁止される。これが本問のポイントだ。
(1)正しい。土地の所有権の登記は一筆の土地ごとにされるので,所有権の登記がある土地とない土地の合併を許すと,一筆の土地の「一部」に所有権が登記されることになり,土地登記簿が「分かりにくくなる」。だから禁止される。
(2)正しい。地目(その土地の主な用途)も,一筆の土地ごとに登記されるから,地目が違う土地の合併を許すと,一筆の土地に「複数」の地目が登記されることになり,土地登記簿が「分かりにくくなる」ので禁止される。
(3)正しい。所有権の登記名義人も,一筆の土地ごとに登記されるから,所有権の登記名義人が違う土地を合併して1つの土地にすることを許すと,一筆の土地の「一部」に別な所有者が登記されることになり,土地登記簿が「分かりにくくなる」ので禁止される。
(4)誤り。承役地である地役権(他人に利用されることを承諾した土地)の登記がある土地と,そのような登記がない土地を合併して1つの土地にする登記を許しても,それが原因で土地登記簿が「分かりにくくなる」わけではない。例えば,他人の通行を許す土地が「承役地である地役権がある土地」だが,地役権はもともと(合筆前から)一筆の土地の一部にも設定できる,言ってみれば分かりにくい権利だからだ。そこで(4)は禁止されない。
正解(4)
平成11年[問 12] 省略
平成11年[問 13] 賃貸借契約(借地借家法)
Aは,建物所有の目的でBから1筆の土地を賃借し(借地権の登記はしていない),その土地の上にA単独所有の建物を建築していたが,Bは,その土地をCに売却し,所有権移転登記をした。この場合,借地借家法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
(1)Aは,建物について自己名義の所有権保存登記をしていても,そこに住んでいなければ,Cに対して借地権を対抗することができない。
(2)Aは,建物についてAの配偶者名義で所有権保存登記をしていても、Cに対して借地権を対抗することができない。
(3)Aがその土地の上に甲及び乙の2棟の建物を所有する場合,甲建物にのみA名義の所有権保存登記があれば,乙建物が未登記であっても,Aは,Cに対して借地権を対抗することができる。
(4)Aの建物の登記上の所在の地番が,その土地の地番の表示と多少相違していても,建物の同一性が種類,構造,床面積等によって認識できる程度の軽微な相違であれば,Aは,Cに対して借地権を対抗することができる。
正解(1)
平成11年[問 14] 賃貸借契約(借地借家法)
賃貸人Aと賃借人Bとの間の居住用建物の賃貸借契約に関する次の記述のうち,借地借家法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)「Aは,Bが建物に造作を付加することに同意するが,Bは,賃貸借の終了時に,Aに対してその造作の買取りを請求しない」旨の特約は有効である。
(2)Bが死亡した場合で,その当時Bの相続人でない事実上の配偶者Cがこの建物で同居していたとき,Cは,当該建物の賃借権に限っては,相続人に優先してBの賃借人としての地位を承継する。
(3)この建物が,その敷地の売却に伴い2年後に取り壊されることが明らかな場合に,「建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する」旨の特約をAB間の賃貸借契約に定めるときは,公正証書によってしなければならない。
(4)BがAに敷金を交付していた場合に,Aがこの建物をDに売却し,賃貸人としての地位をDに承継したときでも,Dの承諾がない限りAの敷金返還債務は承継されず,Bは,Aに対してのみ敷金の返還請求をすることができる。
平成11年[問 14] 解説
(1)正しい。賃貸人Aと賃借人Bは建物の賃貸借契約を結んでいるので,本問の契約は借家契約だ。借家契約では,借地借家法の定めに反する特別の約束(特約)で賃借人に不利なものは無効になる色々な場合がある。でも,(1)のような場合,つまり内装(造作)を賃貸人が買取る定めについては,賃借人に不利な約束をしても,無効にならない。有効だ。借地借家法は賃借人の居住権(やたらに追い出されない権利)を厚く保護する法律であり,居住の質までを厚く保護するものではないからだ。
(2)誤り。住むための建物(居住用建物)の賃貸借契約で,賃借人が「相続人なく」死んだ場合は,同居していた内縁の妻(内縁の夫でもよい!)は,賃借人の地位を受け継ぐ。でも,これは内縁の妻を相続人(正妻(せいさい)さん)に優先させる制度じゃない。賃借人が「相続人なく」死んだ場合にだけ,内縁の妻に賃借人の地位を受け継がせ,その居住権を保護するものだ。
(3)誤り。(3)のような特約をした建物賃貸借を「取壊し予定建物の賃貸借」というが,これを定める場合に公正証書(公証人という公務員が作った書類)でする必要はない。口約束ではダメだが,書面ですれば便箋に書いても良い。なお,公正証書でしなければならない特約は,借地権を事業用(定期)借地権にする場合の特約だけだ。
(4)誤り。

敷金というのは,賃借人が家賃を払えないときの担保として賃貸人が預かっているものだ。家賃の不払いがなければ,賃貸借が終了する際に,その時の賃貸人が,賃借人に返さなければならない。途中で賃貸人がAからDに変わった場合,賃貸借が終了する際の賃貸人はAではないから,賃借人Bを保護するため,AD間で引継ぎがなくても(Dの承諾がなくても),敷金を返さなければならない義務はDが受け継ぐ。だから,Bは,将来Dに対して敷金の返還を請求できる。
正解(1)
平成11年[問 15] 区分所有法
建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
(1)数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は,区分所有権の目的とならない。
(2)区分所有者は,建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うための団体である管理組合を構成することができるが,管理組合の構成員となるか否かは各区分所有者の意思にゆだねられる。
(3)建物の専有部分が数人の共有に属するときは,共有者は,議決権を行使すべき者1人を定めなければならない。
(4)区分所有者は,規約に別段の定めがない限り,集会の決議によって,管理者を選任することができるが,この管理者は,区分所有者以外の者から選任することができる。
平成11年[問 15] 解説
(1)正しい。「マンションの各部屋に通じる廊下や階段その他構造の上から,マンションの住人がみんなで使う部分」を共用部分という。また,「誰かが専用で所有できる権利を設定した部分」を専有部分という。簡単に言えば,「廊下や階段は誰かが独占できない,みんなで使え」ということだが,分譲マンションは1戸建てじゃないのだから,当然の定めだ。
(2)誤り。分譲マンションの管理は,原則として住民の自治にまかされている。そのマンションが1つの国家として政治(管理)を行ってるのだ。国には政治を行う機関として内閣があるが,マンションにも内閣に当たるものがある。それが管理組合だ。マンションは国と比べ構成員(住民)が少ないので,内閣と違い全員を管理に参加させた方がうまく行く。そこで,住民は「管理組合を必ず作り,必ず管理組合に入る」ことになっている。それらが住民の自由意思にまかされているのではない。強制加入だ。
(3)正しい。国には重要な事を決める機関として国会があるが,マンションにも国会に当たるものがある。それが集会だ。集会の決議は,賛成又は反対した区分所有者の数に影響される。そこで,マンションの部屋が共有の場合に(数人が共同で持っているときに),1部屋から2票以上投票できるのでは不公平になる。だから,集会で投票する者を1人決めることになっている。
(4)正しい。国では政治(管理)を行う内閣のトップ,つまり総理大臣を国会の決議で選ぶが,マンションでも同じことが行われる。つまり,集会の決議で,管理者を選べるのだ。管理者はマンションの総理大臣だ。この管理者を各部屋の所有者(区分所有者)からしか選べないとなると,人材不足になりがちなので,外部からも選べるようにしている。最近,社外重役を任命する大企業が増えたが,区分所有法は人材を広く集めようという点で先取りしているのだ。
正解(2)
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